岡﨑乾二郎対談シリーズ――3 ゲスト=朴裕河

January 10, 2010|講義

漱石という井戸と溝

12月12日、岡﨑乾二郎対談シリーズ第3回が開催され、ゲストに朴裕河(パク・ユハ)氏(批評家・近代日本文学・批評史)をお招きしてダイアローグが行なわれました。

冒頭で、芸術作品を語るとき、その言説が対象を歴史化することを容易に免れ得ないという「やっかいな問題」について触れられたあと、対談は、夏目漱石の文学理論と作品を軸に展開されました。漱石が〈自己〉や〈主体〉、〈個体〉に還元されない〈意識〉に注目したことをめぐって、朴氏は、それは個の否定であると同時に意識の主体化であり、ナショナリズムと結びついた主体の形成であったと指摘しました。岡﨑氏は『草枕』『三四郎』にみられる、叙述不可能な解体された対象としての女性像や、対象を欠いた感情などについて言及しつつ、ロジャー・フライのフォーマリズムや、熊谷守一や山下菊二などの絵画との比較を通して、漱石の理論を理解する可能性を示しました。後半には、質疑応答を交えて、言語が言語である以上おびてしまうその権威性にいかに抗するかなどの問題が論じられました。 

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*12月11日、アヴァンギャルドのための絵本講座にて、
朴氏による講義「後藤明生『夢かたり』を読む」が行なわれました。【レポート】

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今後の日程・ゲスト
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