朴裕河｜後藤明生『夢かたり』を読む
December 29, 2009｜講義
12月11日「アヴァンギャルドのための絵本講座 旅する人篇」（講師＝ぱくきょんみ）にて、朴裕河（パク・ユハ）氏（批評家・近代日本文学・批評史）によるゲスト講義が行われました。
朝鮮半島の永興で生まれ、戦中・敗戦・戦後引き揚げを少年時代に体験した後藤明生の短編小説集『夢かたり』を取り上げ、日本人ディアスポラとしての表現について講義が展開されました。同書では植民地の現実はもちろん、そのような状況下での両国の子供達の微笑ましい交流や平穏な日常も描かれており、植民地時代の朝鮮の風景や人々の印象を少年の目線から独自のものとして表現している事などが話されました。
――これら引揚者の人達は、戦後日本に安住できず、また外部者でもない「旅する人」の視線や気持ちを持ち続けていたのではないだろうか。そのような不安定さと後藤氏の素晴らしい資質がこのような描き方を可能にしたのだろう。
最後に、朴氏が、黄芝雨（ファン・チウ）の詩「君を待ちながら」を原文で朗読しました。
