岡﨑乾二郎対談シリーズ――1 ゲスト=郡司ペギオ-幸夫

December 5, 2009|講義

わたしのトークンとしてのあなた・わたしのタイプとしての世界

10月20日、岡﨑乾二郎対談シリーズ第1回が開催され、郡司ペギオ-幸夫氏(理論生命科学)のレクチャーに続いて、岡﨑乾二郎(本校ディレクター)との対談が行なわれました。

前半の「わたしのトークンとしてのあなた・わたしのタイプとしての世界――砂山のパラドクスの肯定的転回」と題した郡司氏のレクチャーでは、砂山のパラドクス(砂山からいくつの砂粒をとれば砂山でなくなるかという問題)を端緒に、何かを概念規定する際に、「タイプ(内包、全体性)」と「トークン(外延、部分の総和)」の二重の基準(ダブル・スタンダード)を持ち込まざるをえないが、その二重の基準の境界はコントロールできないという逆説が示されました。さらに、スティーブン・ウルフラムのセル・オートマトンの理論に言及しつつ、蟹の群れの動きから作られる時計の事例などを通して、「創発」や「生成」についての論が展開されました。
また、この逆説は、「わたし」というモデルの根源的な性格(そこにはすでに他者性が入り込んでいる)でもあり、「この世界、かけがえのない一個のわたし=タイプ」と「目の前の他者、不特定多数のあなた=トークン」、単数性と複数性の齟齬の問題であるとされ、後半の対談はそれを受けて議論されました。岡﨑氏からは、「かけがえのない、このわたし」を確保することではなく、「植物人間の個性」をいかに思考するかという問題提起や、浅い眠りから醒めたときの記憶喪失の例から、意識は逐一リセット・分断されているにもかかわらず、身体的な持続性によってその同一性が仮構されているなどの応答がありました。

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Series 12345

今後の日程・ゲスト
第3回|12月12日(土)|朴裕河(パクユハ)[批評家・近代日本文学・批評史]
第4回|2010年1月23日(土)|宇佐美圭司[画家]
第5回|2月27日(土)|柄谷行人[哲学者]