これからの芸術、これまでの芸術――2 ゲスト=内藤廣

December 17, 2012|講義

個物から、可能な世界を引き出す。

9月13日、内藤廣氏(建築家)をゲストに、「これからの芸術、これまでの芸術」シリーズ第2回が開催されました。

冒頭、本校ディレクター岡﨑氏より内藤、岡﨑両氏が共に選考を勤める吉阪隆正賞の概況が語られました。そのあと、内藤氏が影響を受けた11の建築書についてその著者にインタビューした対談集『著書解題』(INAX出版)に触れ、対談は、同著が扱う1960-70年代を振り返りつつ、ものづくりのあり方をめぐって進行しました。
まず、当時、戦争体験を生活や思想に組み込んでいく試行があったことや、国家(体制)への切断の道として住宅が考えられたこと、大阪万博を境に反体制運動が自活の道を切り捨てたのではないかなどの考察がなされました。内藤氏は、その中で、家族という集団が、体制と結びつくことで認められた如何に疑わしいものであるかについて語りました。また、岡崎氏は大阪万博以前に行なわれたモントリオール博(1967)に言及し、サン=テグジュペリの『人間の土地』に基づく博覧会のコンセプトや、モシェ・サフディの集合住宅《Habitat 67》について述べ、70年代の建築への共通認識として、全体的なシステムを作らずに自立的に無関係なもの同士を繋げるあり方が指摘されました。

そして、議論は70年代の問題意識を軸にさらに展開し、岡﨑氏により、現在の生産・所有システムや現代美術の価値基準との比較から、シェーカー教や中世のギルドなどの共同体が主体を生産組織に置いた点が注目され、セカンドハンド(中古品)によってもののネットワークが組織されることが検証されました。それに関連して内藤氏は、東日本大震災後に救援活動を行なった自衛隊の仕事を評価し、大きな制度の枠組みの中にありながら如何にその枠組みを超えた仕事ができるかについて語り、さらに、震災後の三陸では体制のトップダウンの管理方式が崩れていきていることなどが個人の体験から述べられました。最後に、建築の可能性として、公共空間であるのにも関わらずそれを個人が私有化することや、外部からは取り締まれない別の内部空間を如何に創出するかという認識が導き出されました。

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