ヤリタミサコ|アメリカ現代詩の女性詩から

March 28, 2014|講義

2013年12月10日「ことばのpicture books講座 Lost Modern Girls編」(講師=ぱくきょんみ)にて、ゲストにヤリタミサコ氏(詩人)をお招きし、公開レクチャーが行なわれました。

アイデンティティと、ジェンダー、生物学的なセックスは不可分であり、そこに様々な葛藤を抱えた詩人、詩の存在があります。20世紀初頭から1970年まで盛んに行われたアメリカでのフェミニズム運動と共にあった現代詩の女性詩を中心に講読することでレクチャーが進められました。多くの映像資料や、ヤリタ先生が出版予定の著作から原文も交えた訳詩の朗読を通して展開され、終盤の30分は、バイオリニストの矢野礼子さんによる演奏と、ヤリタ先生による詩の朗読との即興セッションが行われました。

導入で、20世紀のフェミニズム、ウーマンリブ運動での根本をなした、女性の体の自立・自決権の主張をめぐる歴史が、特に避妊の選択やマーガレット・サンガーの「バースコントロール」運動を軸に概観されました。その主張が、1994年に「リプロダクティブ・ヘルス・ライツ」(性と生殖に関する健康・権利)として国連の国際人口・開発会議カイロ行動計画で実際に採択されるまでの時間の重さ、抑圧とその抵抗としての詩が多く紹介されました。

20世紀初頭の文学の同時代的な出来事として、「フェミニスト・マニフェスト」を記したミナ・ロイの詩「分娩」と、当時タブー視されていた出産を題材に「第一の陣痛」を発表した与謝野晶子とを照らし合わせて検証しました。また、自身の性的虐待の経験に根ざしながら、現実的な女性の自立の定義「自分だけの部屋」を記したヴァージニア・ウルフも取りあげられました。
漠然と母や妻であった自身に後年疑問を持ち、自己解放を経て同性愛者としてのアイデンティティを確立したフェミニストのアドリエンヌ・リッチや、人種的マイノリティーを扱った詩人として、ミュリエル・ルーカイザー、サンドラ・シスネロス、そして、性暴力被害者という立場から書かれたジャニス・ミリキタニの詩なども紹介されました。

レクチャー後の質疑では、アメリカ詩の中でも、移民や、黒人・日系人など民族における詩の内容の違いやそれぞれの母国語、口語や訛りなどの使われ方と翻訳について、また、アメリカで起きた運動と日本での運動との同時代性について、そして、一人の女として、母として、芸術家として、子供を生むことと作品を生むことの感覚についてなど、活発に議論が交わされました。

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