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Biography

2004−05年四谷アート・ステュディウム在籍

1977年生まれ。2000年Bゼミスクーリングシステム修了。2006年第1回マエストロ・グワント(最優秀アーティスト賞)受賞。2008年Asian Cultural Councilのグラントにより渡米、ISCP(ニューヨーク)に参加。

E-mail
hashimoshi(a)gmail.com


活動歴

- 主な発表

2017
●「未来芸術家列伝IV」[東京]

2011
●「最近知り合った友人を運ぶ、運ばれる」(「試行と交換/いるはずもない(ダンスフォーラム We dance)」にて)ヨコハマ創造都市センター他 [横浜]

2010
●「逆」(グループ展「もっと動きを:振付師としてのアーティスト」にて)広島市現代美術館 [広島]
●「気象と終身」(Whenever Wherever Festival にて)アサヒ・アート・スクエア [東京]
●「来ると減る」Art Center Ongoing [東京]
「行けない、来てください」アーカス・スタジオ [茨城]
●「投石」(日韓アーティスト・批評家交流展「point」 にて)京都芸術センター[京都]

2009
●「Outside/Inside」(グループ展「Emporium - A New Common Sense of Space」にて)レオナルド・ダヴィンチ科学博物館[ミラノ]
●「This River」(レクチャー・シンポジウムにて)Yotsuya Art Studium[東京]
●「Each/Reach」(Whenever Wherever Festivalにて)森下スタジオ[東京]
「Gift」CAMP/Otto Mainzheim Gallery[東京]
「Reception」CAMP/Otto Mainzheim Gallery [東京]

2008
●「One Dozen」(Alpha M projectにて)art space kimura ASK?[東京]
「Foot」スクラッチタイル[横浜]
●「Focus」(グループ展「point」にて)Alternative Space Loop[ソウル]
●「Fruit」タイムズスクエア(Between 44th & 45th streets)[ニューヨーク]
●「FLOWER」ISCP[ニューヨーク]
●「FULCRUM」sh site[ニューヨーク]
●「Frame」38th & 39th streets, 8th & 9th Avenues[ニューヨーク]

2007 
●「REMEMBER」(「OPENING EXHIBITIONS」にて)遊戯室[茨城]
●「Land Escape」(「Experiment Show」にて)旧四谷第三小学校体育館[東京]
●「Keep Sleep, Not Deep Sleep」maru gallery[東京]
●2007年頃から、いつまでか不明 「待てない、逃げてください」アーカス・スタジオ [茨城] 辺り、及び不明

2006
「Wake Up. Black. Bear.」GALLERY OBJECTIVE CORRELATIVE[東京]
●「Make Up Black Box」(「pose LOOP dOOr / do or LOSE rOSE」にて)GALLERY OBJECTIVE CORRELATIVE
●「Rock in Rucksuck」(グループ展)東京藝術大学[東京]

2005
●「無題 (埋める)」多摩川河川敷[東京/神奈川]
「Re」GALLERY OBJECTIVE CORRELATIVE

2004
「デュエット」(Spiritual Exerciseにて)GALLERY OBJECTIVE CORRELATIVE
●「pictogramophone : POSTE RESTANTE」(コラボレーション)BankART 1929[横浜]
「Another」GALLERY OBJECTIVE CORRELATIVE

2006年第1回四谷アート・ステュディウム最優秀アーティスト賞 受賞者展
橋本聡「Wake up. Black. Bear」開催に寄せて


橋本聡は有望かつ注目すべき作家です。
その作家としての可能性は、彼が、ここ数年のきわめて高密度なキャリアのなかで、
つねに議論に値する、議論を要請する、そして議論をつくり出す、
語の正確な意味で真に生産的な、問題としての作品(問題作)をつくりつづけてきたことで明らかです。

(誤解なきように)念のため補足すると、ご存じのように、
人が論議しなければならない問題とは、いつでも、決して抽象的なものではなく、
きわめて具体的に、われわれが立つ日常に関わるものであり、
たとえ些末な見かけをもっていたとしても、周囲の生活の場すべてに動揺を与えるであったことを
想起していただければ、と思います。
ゆえに、われわれは、その問題を一刻も早く解決しなければならないし、
よって、われわれは(そのとりとめもない些末な事柄をめぐって)深刻に延々とつづく
議論をはじめてもしまうのでした。

ぜひ、ご高覧いただくよう、お願いいたします。

text by Kenjiro Okazaki 岡乾二郎

H/a・shi・mo・toに気をけろ


橋本くんには、いつも歩きつづけているような印象がある。
それは彼がゆっくりと変わっていく人だからかもしれない。
やや俯き加減で、大またに足を運ぶ男。
なかなか気づけないのは、その何気ないそぶりに仕込まれたたくらみだ。

彼のPCには、古今東西のあらゆる名画の画像がいっぱいにつまっており、彼が持っているかばんを開くと、めったに書店では手に入れることができない、貴重な画集の数々がばらりと溢れ出す(彼はそれを「特別価格」で僕らにわけてくれる)。彼にはどこか練達の行商人めいたところがあって、あちこちの奇妙な場所から携えてきた、新たなイメージやアイデアをおしみなく投げ出してみせる。そのため、彼が姿を見せると、今日は何を持ってきたのかと周囲の人間がむらがることになる。
ところで行商人というのは、いつ現れるのかわからないからこそ待ち遠しい。橋本くんもまた、ふらりときてはふらりと去っていく。彼と会う約束をしても、いつやってくるのかは誰にも予測することができない。ふと気づくと彼はすでにその場所におり、僕らが気づく前にいつのまにか姿を消している。おそらく、彼が興味を持っているのは、異なる場所と場所、時間と時間、人と人を結びつけることである。そのために彼は、精妙に人と事物との関係を測る。というのも、人が見るのはいつでも絵と絵との関係や、人と自分との関わりであって、一枚の絵や、一人の人間を認識することなどできないと彼はよく知っているからだ。

彼にとって敵となるのは、絵は絵であり、美術は美術であるといった単純な思い込みだ。この敵と戦うための武器のひとつが、彼自身の身体となっている膨大な美術アーカイヴである。彼はこの生きた知識を使って、思わぬやり方でイメージや事物を関係づけたり引き剥がしたりし、時には壁を作って隔てたりする。 それはとても洗練されているので、観客はしばしば自分がひとつの美術作品を見ているのだと思い込んでしまう。だけどそれは誤解である。橋本くんはもっとおそろしい人なのだ。見る、というたやすくあっけないことが、実は、ひどくあいまいで脆いものであること。作品がぼそりと呟くこのメッセージに、気づいた瞬間、思わず立ちすくむ。
充分に時間をかけて、虚心坦懐に彼の作品と向かい合ってほしい。そこに、何やらぎろりとしたものを認めるとき、足元をすくわれているのは僕たち観客の方なのだから。


text by Shigeru Kurakazu 倉数茂



[2005、『Spiritual Exercise』カタログより]