Theory Round Table シンポジウム 岡田温司/松浦寿夫/岡﨑乾二郎
March 31, 2014|講義
生産過程としての芸術
3月1日、講座「Theory Round Table」にて、岡田温司氏(西洋美術史、京都大学大学院教授)、松浦寿夫氏(画家、西洋近代絵画史)をゲストに、岡﨑乾二郎(本校主任ディレクター)が加わりシンポジウムが開催されました。
討議では、本年度共通のテーマとして掲げられた『芸術と(いわれる)生産過程あるいは「生」活』と、当講座の開講以来、主要な思考の対象として取り上げられてきた「生産の条件」が、主体の一貫性を崩壊させ、変更を余儀なくさせる抵抗(切断)という契機とともに改めて検討されました。
まず松浦氏から、明治期に発案された感情を伝達するさまざまな「表現方法=インフラ」が、固定化・定型化した後、共同体内で同調(融合)を要請する原理となったという見解が示され、その同調(融合)の作用に切断を導入した前衛詩人の試みが、議論の出発点として提起されました。
これを受け、岡田氏からは、氏が当講座の講義で取り上げてきたメディウム・スペシフィック(あるいはメディウム間の混交と交流)の問題に引き寄せつつ、諸領域が幸福に和解する融合的なモデルに綻び(亀裂)を生じさせる、抵抗としてのメディウムのあり方が指摘されました。
岡﨑氏からは、古賀春江や新感覚派の文学が射程として持っていた、主体を喪失させるエスの概念や死の欲動(デス・ドライブ)が提示され、さらに主体(あるいは身体)の組成が変わる(=別人になる)という事態が、「何かを理解する(あるいは出来るようになる」という経験とともに考察されました。