中谷礼仁|ひとが住むかたち――プレートテクトニクス境界の旅
1. Livelihoodからbuildinghoodへ インド
2. 石の重み イラン、ギリシャ、マルタ
3. 人間の場所 インドネシアにおける死と生と環境
講座「Theory Round Table」の一環として、 歴史工学家の中谷礼仁氏による講義が、11月6日、11月13日、12月4日の3回に渡って行われました。
東日本大震災がもたらした土地が沈むというインパクトをきっかけに、建築と土地(地形・地質)との関係を問い直すべく始められた、プレートテクトニクス(ユーラシアプレート)境界をめぐるフィールドワークの結果が報告されました。
インドのウッタラカンド、ダージリン、ドーラビーラにおける調査の発表にはじまり、「Livelihoodからbuildinghoodへ」をテーマに、暮らし方(=Livelihood)と土地(地形・地質)とが合わさって建て方(=buildinghood)が生まれるという構想が提示されました。そこでは人が住むために欠かせない、水源や日照、建設地、建設素材、耕地といった基本的な条件が考察されました。
また、イラン、ギリシャ、マルタ共和国における調査の発表では、「石の重さ」をテーマに、土地(地形・地質)を形成する石が、同時に素材として、建築の構造にいかなる影響を与えるかが検証され、石の性質と加工形態を比較しながら、とりわけ軽く加工が容易で豊富に産出される、石灰岩の特質と重要性が明らかにされました。
さらに、インドネシアのスラウェシ島、スンバ島、フローレス島、ニアス島における調査の発表では、アジアにおける石の扱い方とともに、「人間の場所」をテーマに、集落を構成する人の配置が考察されました。集落の編成を、古代的な宇宙観によるものとして捉えるのではなく、指導者(王)が住むべき場所の決定や、指導者(王)の位置によって生じる階層構造の不平等をいかに解消するかという、共同体の空間表現として推論されました。