田中正之|顕在化するプロセス:マティスからプロセスアートまで

November 5, 2013|講義

講座「Theory Round Table」にて、田中正之氏(西洋近代美術史、武蔵野美術大学教授)による講義が9月19日、26日の2回に渡って開講されました。2013年、プラダ財団によってリメイクされた「態度が形になるとき」展(オリジナル:1969年)が、同時期に開催の第55回ヴェネチア・ビエンナーレで展開された、ある種のプリミティビズム的な「イメージの発生」とは異なる「形態の生成」を提示したことをどのように受け止めるかという問題を端緒に、講義が行なわれました。そしてまた、近年見受けられる1970年代のコンセプチュアル・アートを再現する試みを、こうした傾向といかに結びつけ思考できるのか――それらの考察の手がかりとして、19世紀末から1960年代の美術動向に着目し、制作プロセスの顕在化が孕んでいた、作者や作品の形態・完成などの概念を否定する試みが改めて検証されました。

作者、あるいは作品とは何か、美術批評や美術館制度など、作品を成立させる状況、情報の問題が、マルセル・デュシャンの《泉》などを例に扱われました。また、一つの完成に向けて発展的に進行する制作ではなく、複数の完成形があるような制作プロセスを示すものとして、マティスのマーグ画廊での展示や、複数のバージョンをもつ彫刻作品《ジャネット》が取り上げられました。
そして、作品の形態が作者の手を離れ、メディウムや環境、展示行為によって決定、変化する在り方として、ロバート・モリスが『アンチ・フォーム』で思考した問題や、クレス・オルデンバーグのソフト・スカルプチュア、プロセス・アートの作品などが俎上にのせられました。さらに、作品の内側と外側という境界を突き崩し、鑑賞者の存在を作品が生成するプロセスのなかに組み込んだ実践には、アラン・カプローのハプニングが、そこから、鑑賞者の参加そのものを純粋化して抽出し、「プロセス」のみを前景化した試みとして、リクリット・ティラヴァニャの初期インスタレーションなどが対象として論じられました。

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