和田忠彦|ことばの窓からみえる世界-須賀敦子の場合

February 8, 2012|講義

「ことばのpicture books講座 あわいにある篇」の一環として、和田忠彦氏(イタリア文学者、エッセイスト、翻訳者)による講義が、11月11日に行われました。

須賀敦子(イタリア文学、翻訳家、作家)が論じられました。彼女は長くイタリアに住み、そこで日本語と再び出会いました。それからさらに時間が経ってから、自ら書くようになりました。ウンベルト・サバ、ユウジェニオ・モンターレ、ナタリア・ギンズブルグ、アントニオ・タブッキらの詩や小説を、彼女はどのように読んだか、その独特さが、距離感、時間、記憶、翻訳、回想、といった観点から検討されました。
翻訳とは、単一のターゲットに向かうことでなく、他者の記憶である複数のテクスト間を往き来することだという考え方が、テクスト=記憶が浸透する時間、ということから考察されました。
彼女のクロノロジー観が取り上げられ、〈歴史〉の裏側に貼りついているけれど、表層からは視えない〈時間〉や〈記憶〉がある、地図をなぞって平面から立体を感じるように、心のひだをなぞり、感情の起伏をたどる、そういう須賀敦子の書き方が示唆されました。


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