岡﨑乾二郎対談シリーズ――1 ゲスト=翁長直樹/前嵩西一馬
アトピックなトピックをいかに論じるか
2月26日、翁長直樹氏(沖縄県立博物館・美術館副館長)、前嵩西一馬氏(文化人類学・沖縄研究)をゲストに、「岡﨑乾二郎対談シリーズ」第1回が行なわれました。
はじめに、翁長氏により、アメリカ軍の支援のもと1948年に設立された芸術家村、ニシムイ(沖縄県那覇市首里儀保町)について、元米軍医師のスタンレー・スタインバーグ氏にインタビューした映像が紹介されました。スタインバーグ氏は、ニシムイで画家の玉那覇正吉、安次嶺金正らに絵を習い、彼らの作品のコレクターでもあり、また翁長氏は、2009年に沖縄県立博物館・美術館での「移動と表現」展で、ニシムイの絵画と、沖縄から移住した美術家の作品などを展示しました。長らくタブー視されてきたニシムイをめぐって、表象からこぼれ落ちる語りがたさの問題について、さらに、バラバラな複数の場所を結びつけているのが「移動」だとすれば、にもかかわらず、そうした問題が、アトピック(不特定)ではなく、つねにトピック(特定)の場所と結びつけて考えられてしまうことなどが議論されました。
続いて、同博物館・美術館での展覧会「沖縄文化の軌跡 1872-2007」(2007-08)の連動企画として行なわれた、東京での「沖縄・プリズム 1872-2008」展(東京国立近代美術館、2008)を基点に、政治的な言語と表現の関係について論じられました。前嵩西氏は、語りにくいものを語るさいの手がかりとして、社会的に文脈づける「紐つき」の問題をどのように考えるかという問いを、琉球大学や演劇《人類館》などの事例とともに提起しました。岡﨑氏からは、語りがたさにこそ作品の価値があることが指摘され、文化を「症例」として見る立場からは、一般(中立)的な立場は存在しえないこと、そして、そうした症例を読み解く批評の可能性が示されました。
岡﨑乾二郎対談シリーズ 開催延期のお知らせ
第2回|ゲスト:村上隆(アーティスト)
第3回|ゲスト:隈研吾(建築家)