岡﨑乾二郎対談シリーズ――2 ゲスト=斎藤環

February 9, 2010|講義

(私ではなく)形骸が考えさせる

11月17日、岡﨑乾二郎対談シリーズ第2回が開催され、斎藤環氏(精神科医)のレクチャーに続いて、岡﨑乾二郎(本校ディレクター)との対談が行なわれました。

前半の斎藤氏のレクチャーでは、まず文学の作動原理として、「関係平面」「解釈平面」「操作平面」という三つのキーワードが提示されました。それらを軸にして、中上健次、谷崎潤一郎、西尾維新らの作品を例に、作品の構造が複雑化すると身体性が希薄化しキャラクター同士の関係性が前面化すること、想像界は階層構造を持っておりレイヤー的な認識と親和性が高いことなど、ラカンがほとんど語らなかった想像界にスポットを当てた、文学作品の分析が行なわれました。続いて、統合失調症および自閉症患者の事例を通して、身体は想像的で多重構造を持っており、複数の感覚ブロックがシンクロすることによってリアリティが生じるという仮説が提示されました。
後半の対談は、感覚ブロックを統合する点としての身体とはいったい何か、そしてそれは現代では解体されつつあるのかという岡崎氏の問いからはじまりました。議論は岡崎氏の問いに斎藤氏が答えるかたちで進み、メディアが統合され、ある概念が成立した場合、それを保持しようとする倫理が作動することや、完全に統合できないものを無理に統合するために18世紀以来の歴史主義が繰り返されていることなどが、キャラクター「せんとくん」やニコニコ動画などの例とともに批判的に検証されました。最後に、想像的な身体ではない、いわば現実的身体とも言うべき神経系的身体の可能性が議論されました。

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今後の日程・ゲスト
第5回(最終回)|2月27日(土)|柄谷行人[哲学者]