批評(創造)の現在シリーズ――4 講師=福永信/松井茂/水無田気流
February 4, 2009|講義
11月30日、批評(創造)の現在シリーズ第4回が開催され、福永信(小説家)、松井茂(詩人)、水無田気流(詩人、社会学者)各氏による「社会・アイデンティティ・批評」を同一テーマとしたレクチャーに続いて、ディスカッションが行なわれました。
福永氏は、岡田利規の小説が評された文芸誌『群像』の「創作合評」と、その小説および同作品の戯曲とを取り上げながら、一人称が三人称的になるような複数化する主体のあり方について論じました。それを近年の小説に特徴的な主体のあり方と位置づけた上で、その参照として、絵本『とき』(谷川俊太郎=文、大田大八=絵)が紹介されました。
松井氏のレクチャーでは、「批評としての制作」として、複数の実験形式・システムの構築、運用をはかる自身の詩作をたどりつつ、「劣化しないコピー」はいかに可能かの問いが出されました。さらに関連して、テキスト・声・イメージが等価に扱われる、新国誠一らのコンクリート・ポエトリーの実践について言及されました。
水無田氏は、創作の基盤として自身をとりまく今日のポストモダン状況について、アイデンティティとその余剰・分裂を軸に社会学的分析を行ないました。ハーバーマスの図式で言う行政と経済の公的なシステムに対して、言語が統御する生活世界に注目し、言葉の世界である後者への興味が語られました。
ディスカッションでは、戦争・ナショナリズムと詩、作品と作者としての主体=筆格(水無田)などについて、来場者からの質問を交え、活発な議論が行なわれました。