*1 |
1967年からはじまる『オープン・シリーズ』は、マザウェルが、ある日アトリエで立て掛けられた大きな縦長のキャンバスの上にさらに重ねて建て掛けられた小さな縦長のキャンバスを偶然に発見し(「プロポーション」を発見したと彼は言う)大きなキャンバスにその小さなキャンバスを木炭で縁取ったことによる。四角形の中(上あるいは向こう)のもう一つの四角形。マザウェルははじめそれをドアに見立て、次に逆さにひっくり返し、窓に見立てた。(エミール・ディ・アントニオ/ミッチ・タックマン『現代美術は語る ニューヨーク・1940-1970』林道郎訳、青土社、1997、p.118) |
*2 |
クレメント・グリンバーグ「抽象的・再現的・その他」瀬木慎一訳、『近代芸術と文化』紀伊國屋書店、1965、pp.159-160 |
*3 |
バーネット・ニューマン(1905-1970)の、垂直線「ジップ」が、色面を分かつ線であると同時に空間を拡張する効果も参照されたい。 |
*4 |
マザウェルが最も尊敬する画家がマティスであったことは周知の事実である。(前掲書『現代美術は語る』p.77を参照) |
*5 |
Clement Greenberg “Modernist
Painting”, 1966 (邦訳は筆者) |
*6 |
Clement Greenberg “Modernist
Painting”, 1966 (邦訳「モダニズムの絵画」川田都樹子・藤枝晃雄訳、『モダニズムのハード・コア』太田出版、1995、pp.44-51) |
*7 |
『オープン・シリーズ』のひとつ《Mexican Window》(1974)(図3)を参照。スタッコとは、外壁塗装に用いる漆喰の呼称。 |
*8 |
マザウェルは『Open』という単語を、シュルレアリストの自由連想の態度をもって使用し、たとえば辞書上での『Open』という単語に連なる、その変形群それ自体を詩として見るというヴィジョンをも持っていた。「『ランダムハウス英語辞典』<完全版>には、『オープン』という単語のもとに82個の見出しがあり、それは、詩であるかのように行を分かたれて置かれているようでした。私にとってこれら見出しの入り口は、あらゆる種類の連想やイメージによって満たされているのです」(『Robert
Motherwell』Harry N. Abrams, Inc., Publishers, New York,
1982, p.163) |
*9 |
マザウェルの『オープン・シリーズ』はマティスとともに当然の如く、デュシャンの《Fresh
Widow(塞がれた新鮮な窓/未亡人)》(1920)を想起させる。ある美術家名鑑には以下のように紹介される。「マザウェル、ロバート
MOTHERWELL, Robert(1915-)アメリカの画家、理論家。抽象表現主義の先駆者。亡命のシュルレアリストたちと親交をもち、デュシャンの提案と協力で、ダダに関する本を一九五一年に編集出版している。抽象表現主義の作家たちが概してデュシャンに無関心であったのに反し、マザウェルだけはときどき食事をともにするような親しい関係にあった」(梅宮典子・平芳幸浩「デュシャン事典」、『美術手帖』1998.8、美術出版社、p.106) |