最近の解剖学的な研究では、ここに描かれている屍体は死後3日後の状態であると正確に同定できる。イエスは死後3日後に復活を果たしたのだから、腐乱しはじめたこの死体はまさに復活する直前のイエスを描いていたことになる。しかしそれは復活を信じるものにのみ有効な確信である。復活しえるはずのないものが復活する。ほとんど100パーセント確定された死の中のわずかな生。奇跡とはこうした確率的な事件であり、それは不確定ゆえに信仰が確保されるのとパラレルだった。この絵を見て信仰を失いかけたと告白した『白痴』のドストエフスキーはその言と裏腹に、この絵によって信仰がいかなるものかを正確に把握しえたと言えるだろう。

1521 | oil on wood | 30.5×200cm