《ブザー回路》において鉄板が震え続けるのは、因果関係の連鎖が以下のような円環を描くことによってである。【鉄板と銅線の接触がなされれば、電磁石は働く→電磁石が働けば、接触は切れる→接触が切れれば、電磁石は働かなくなる→電磁石が働かなくなれば、接触がなされる】。この連鎖を純粋な論理に還元すれば、【スイッチを入れる(接触がなされる)←→スイッチが切れる(接触が切れる)】というアンチノミーに帰結してしまう。ブザーとはこの二律背反が引き起こす論理的痙攣に他ならない。それゆえコンピューター上の無時間的な『論理回路』において、入力が0ならば1を、1ならば0を出力するプログラムを実行しようとすると、連鎖は起こらず、ただフリーズするだけとなる。この論理的膠着(アンチノミー)を解決し、ふたたび循環/痙攣を起こすには、回路に時間が「ディレイ(遅延)」というオブジェクトのかたちで導入されなくてはならない。《論理/因果シミュレータ》では、そのような「ディレイ」の時間数値を入れ替えることによって起こる、論理的痙攣の変異をはっきりと知ることができる。

2003 | 鉄板、銅線、電池 | 100×70cm