岡田温司|タブローとショット

February 15, 2014|講義

講座「Theory Round Table」にて、岡田温司氏(西洋美術史、京都大学大学院教授)による講義が12月21日に行われました。

映画は先行する絵画的手法をどのように取り入れ、いかに自らのボキャブラリーを獲得してきたか。影、鏡、肖像、活人画、美術館、抽象画という6つの観点から、その問題が以下のように検証されました。講義は美術史家や映像作家が繰り広げてきた議論を掘り下げるというより、絵画(画像)と映画(映像)とを見て確かめながら、両者が互いに交差し、拮抗し合ってきた関係性が探られました。

|アルトゥール・ロビソンの『戦く影』(1923)やエイゼンシュテインの『イワン雷帝』(1944)が取り上げられ、メタ映画的な仕掛けをつくりだす影絵や、不気味なアナモルフォーズとして現れる影の存在が、17世紀オランダの版画とともに分析されました。

|タルコフスキーの『鏡』(1975)が取り上げられ、鏡を見つめる眼差しが、ショットの切り返しによって、同時に鏡から見つめ返す眼差しにもなるという、自画像的な構造が観察されました。

肖像|アルバート・リューインの『ドリアン・グレイの肖像』(1945)が取り上げられ、主人公の身代わり(=ドッペルゲンガー)となって老い朽ちていく肖像画の役割が、鏡像的かつそれとは異なるものとして示されました。

活人画|パゾリーニの『ラ・リコッタ』(『ロゴパグ』所収、1963)が取り上げられ、映画のなかに持ち込まれた絵画的な構図や、不動のなかにある運動が思考されました。

美術館|ロベルト・ロッセリーニの『イタリア旅行』(1953)が取り上げられ、舞台ととして映し出される美術館や博物館だけではなく、見る人(=鑑賞者)としての登場人物が考察されました。

抽象画|ミケランジェロ・アントニオーニの『赤い砂漠』(1964)が取り上げられ、アルベルト・ブッリやジャン・フォートリエなどの絵画作品との類似性や、人工物と自然、未来主義的なものとプリミティブなものの並置が、いかなる効果をもたらすかが検討されました。

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