English Inter-Active ゲスト講義=Robert Woodruff

June 29, 2009|講義

6月10日(水)、English Inter-Active(講師=Yelena Gluzman)の一環として、アメリカの演出家Robert Woodruff(ロバート・ウッドルフ)氏によるレクチャーが行なわれました。

ロバート氏は、1970年代後半より数多くの演劇制作を行なってきました。彼の主な関心は、シアターの中の暴力、個人的なものと政治的なものの関係、近年は特に、音楽とテクストの関係について向けられています。作品はオリジナルの他に、ギリシャ悲劇やオペラを扱ったものが多く、その制作においては、多岐にわたるコラボレーションに基づく意欲的なアプローチに取り組んでいます。

今回のレクチャーは、アメリカ、オランダ、イスラエルの音楽家と共同制作した作品の解説を中心に、演劇的な出来事を発生させるアイデアについて、参加者からの質問を交えたトークが展開されました。

[参考作品]
『メディア』/『オルフェウスX』/ラシーヌ『ブリタニクス』/
ドストエフスキー『地下室の手記』

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舞台の上での「沈黙」
作品に共通して登場するのが、カオス的な状況や暴力的な音・出来事のあとの「沈黙」です。6分半の長さに及ぶこともあるという「沈黙」を舞台上で使用することについて、「その瞬間、観客全体が一体となり、劇場内がある種の聖性に包まれる。そうした沈黙を見たいから劇場にいる。」さらに、「すべての演劇はつまるところ、他の人の目を見て、そこにないものを見ようとすると言うところにある。」と理由づけました。

音楽/音量
上記の作品は、音楽とテクストとの関係について着目した演出がなされています。例えば『オルフェウスX』では、全ての台詞が歌として歌われますが、このように音楽としてテクストを扱うことで体感的なリズムが発生し、そのリズムが沈黙を生むことにも繋がります。また時に、台詞が聞き取りにくいほどのボリュームで音楽が演奏される演出について、テクストと音楽を同等に扱う目的であることが語られました。


Robert Woodruffロバート・ウッドルフ

ロバート・ウッドルフは演劇制作と教育に対する苛烈なまでに批評的かつ個人的、誠実で共同作業に基づくアプローチによって俳優、舞台デザイナーや学生のあいだで名高い演出家です。また観客にとってはその忘れがたい演出によって知られています。

1970年代後半から80年代の初頭にかけて、ウッドルフはサム・シェパードの過酷でショッキングな作品の演出によってもっともよく知られていました。その後、かれは他の偉大なコラボレーターとも演劇を作り上げてきました。その中には、ソフォクレス、ブレヒト、ラシーヌ、ドストエフスキー、ジョセフ・シェイキン、エドワード・ボンド、そしてチャールズ・ミーなどが含まれています。最近の関心は、オペラ、ニューミュージックシアター、そして音楽とテクストを使った作品制作に向けられています。

ウッドルフはアメリカン・レパートリー・シアター(A.R.T.)の芸術監督を2002年から07年まで努め、コロンビア大学、ニューヨーク大学、そして現在はイェール大学の演劇学科で舞台演出を教えています。また彼はアメリカのもっとも重要な芸術家たちを支援し、広報するための組織であるユナイテッド・ステーツ・アーティストの07年度のUSAビラー・フェローに選ばれています。
今回の来日はアジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)からのグラントによるものです。