THEORY ROUNDTABLE[前期] 講師=石岡良治

October 4, 2008|講義

THEORY ROUNDTABLE前期の講義は、理論(テオリア)が観照的に「見ること」を意味することから、視覚を通じ、理論そのものを問い直す試みと、批評と理論の接点にある、現代性(モダニティ)を検証することから始まりました。

クレメント・グリーンバーグの「コラージュ」、イヴ=アラン・ボアの「フォーマリズムと構造主義」(in Art since 1900)、ロザリンド・クラウスの『ピカソ論』では、記号の物質性とリアリティ、シニフィアンとシニフィエの間に入り込む亀裂、記号固有の価値について考察しました。

ヴァルター・ベンヤミンの『ボードレールのいくつかのモティーフについて』では「無意志的経験」と「アウラ」の関係を、ジル・ドゥルーズの『感覚の論理』では絵画における描かれ方の暴力性と運動、描画行為に基づく事実性を分析しました。アロイス・リーグルの「触視的(haptic)」という概念を、ドゥルーズは近接的な視覚(vision)のキーとしてとらえています。そして眼が主であり手がそれに従属する古典的関係を、ニュートン光学おける光=opticalとゲーテの色彩論における生理学的色彩=hapticに重ね、手の運動にこそある思考性を探りました。

最後にデイヴィッド・バチェラーの『クロモフォビア――色彩をめぐる思索と冒険』では、ミニマルアートにみられる工業的色彩、ドナルド・ジャッドのピンク色のプレクシグラスの箱における「不気味な物質性uncanny materiality」と「結晶crystal」の問題がとりあげられました。[秋本]

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左|パブロ・ピカソ《ギター》1914年3月以後
中|ジル・ドゥルーズ『感覚の論理』山県煕訳(法政大学出版局、1994年)
右|デイヴィッド・バチェラー『クロモフォビア』田中裕介訳(青土社、2007年)