これからの芸術、これまでの芸術――3 前嵩西一馬/眞島竜男/岡﨑乾二郎[11月12日]

October 25, 2012|講義

特別公開講座「これからの芸術、これまでの芸術」シリーズ第3回として、ゲストに前嵩西一馬氏(文化人類学・沖縄研究)、眞島竜男氏(美術家)をお招きして、以下のテーマで岡﨑乾二郎(本校ディレクター)とのディスカッションを行ないます。
四谷アート・ステュディウム会員以外の方も受講することができますので、奮ってご参加ください。

芸術と法、を巡って。

(芸術作品を含め)文化的生産物の受容は一文化圏内に収まりません。当然それに対する判断、判定も、一国内の法(制定法、慣習=感性的な習慣、条理も含めて)のみで確定されえない。それが(複製されたものも含めて)事物として、時間、空間を特定できず移動する以上は。

現代美術の世界では国際展という展覧会形式が基本とされています。近年(実は昔から)、複数の文化(政治)領域を横断し、異なる規範、法的枠組みによる意味、機能の分裂それじたいを作品構造にする作品も増えてきました。けれど実際の政治情勢が複雑化し、混沌とすればするほど、いかにこうした構造を組み込んだとしても、作品は芸術というバリアで(治外法権的に)守られた、背反的議論を唯一許容できる特権性をただ強調することで終わってしまう事にもなりかねません。すなわち、芸術という名は、いかなる論争も対立も抗争も包容し、予定調和的に解消、中和する便利な欺瞞的装置として使われてしまう。あげく特定の立場(体制)に政治的(経済的)に利用されかねない恐れがある。

その意味で芸術はいわば成立不可能な概念としてのみ健全に機能するともいえるでしょう。芸術は、その制作過程と受容の過程が分断され、複数の場を横断することが強いられ(引き裂かれ)組み立てられてきた。ゆえにその作品の意味のみならず、それが一体どこに存在するのかも確定されえない。芸術という概念はこんな不確定な終わりなき抗争状態(スキャンダル)が収束する場=焦点としてとりあえず措定されたものでした。遡れば、宗教改革(および対抗宗教改革)の時期に作られた作品にも、19世紀以降(芸術という概念が使われ始めた時代)の作品にも、こうした構造はみてとれます。もちろん近代日本美術史の局面で起こった芸術上の事件のさまざまにも、その要因として同じ構造を見いだすことができます。――岡﨑乾二郎

お申し込み方法
*本校の会員以外の方も2,000円の受講料で聴講することができます。事務室までお電話/ファックスでご予約ください。会員の方に限り、メール申し込みも受け付けます。
*早々に定員に達することが予想されます。定員に達し次第受付を締め切りますので、お早めにお申し込みください。

■日時:2012年11月12日(月)19:00-21:30
■会場:四谷アート・ステュディウム講義室 【地図】
■受講料:2,000円
■問い合わせ/申し込み先
近畿大学国際人文科学研究所 東京コミュニティカレッジ
四谷アート・ステュディウム事務室
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-5 2F
tel. 03-3351-0591(9:30-17:00、日曜・祭日 休)
fax. 03-3353-7300


ゲスト プロフィール

前嵩西一馬まえたけにし・かずま
1971年生まれ。文化人類学・沖縄研究。コロンビア大学人類学部博士課程修了。現在、早稲田大学琉球・沖縄研究所客員講師、早稲田大学、明治大学、日本大学にて兼任講師を務める。主な著書・論文=『沖縄学入門――空腹の作法』(勝方=稲福恵子と共編著、昭和堂)、「沖縄で探す「鞘」の言葉――「高度必需品」としての蝶柄、笑い、生物群」『思想』9号(岩波書店)など。

眞島竜男まじま・たつお
1970年生まれ。美術家。1990-93年、Goldsmiths College, University of London在学。1997-2000年、スタジオ食堂参加。00-04年、Bゼミ Learning System専任講師。主な個展に、「無題(栄光の彼方に)」(2012)、「北京日記」(2010、以上、TARO NASU)、「The Incredible Shrinking Pizza」(Hiromi Yoshii、2005)など。主なグループ展に、「六本木クロッシング2007: 未来への脈動」(森美術館、2007)、「食と現代美術 Part 2 美食同源」(BankART1929、2006)、「第6回シャルジャー・インターナショナル・ビエンナーレ」(アラブ首長国連邦、2003)など。 2013年1月よりblanClassで連続レクチャー「どうして、そんなにも、ナショナルなのか?」を月1回行なう。


これからの芸術、これまでの芸術 シリーズ
- プレ・セッション|
 石川卓磨/上村卓大/蔵屋美香/沢山遼/渡辺泰子/山本良浩

- 第1回|ゲスト=宮本隆司/林道郎
- 第2回|ゲスト=内藤廣

※本シリーズは、通年で全5回を予定する特別公開講座(不定期開講)です。各回の詳細や受講方法については、決定次第WEBサイト、Twitter等でお知らせします。