これからの芸術、これまでの芸術――1 ゲスト=林道郎、宮本隆司 [6月9日]

May 26, 2012|講義

お知らせ
「これからの芸術、これまでの芸術」第1回は、定員に達したため、受付を終了しました。

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「これからの芸術、これまでの芸術」シリーズがいよいよ開講されます。
第1回ゲストには、林道郎氏(西洋美術史、美術批評)、宮本隆司氏(写真家)をお招きし、 津波を撮影した現地の人々による映像とその撮影者へのインタビューで構成された、宮本氏による《3.11 TSUNAMI 2011》 を上映、あわせて林氏、本校ディレクター岡﨑乾二郎を加えたディスカッションを行います。

われわれの見ているものすべては時間に押し流され崩壊していく。われわれの視覚がそれを捉えられないだけだ 。もし写真を撮影する行為が、この無慈悲、不可避に進行しつづける怪物からの一時的な退避、離脱だけを意味するのであれば、写真が示すとされる真実などは、客観という名目で提示された人々の願望、追憶をただ投影しているにするにすぎない。

この写真への願望にこそ、宮本隆司氏は一貫して抵抗してきた。むしろ宮本が実践してきたのは、写真をその不可避の時間へと向けて切り開き、あるいは写真という場をその無慈悲な過程へ明け渡すことだった。だから宮本の仕事はいつでも、それ自体が進行しつつある一つの出来事だった。あらゆる災害がそうなように、この過程は決して(結末が訪れることも)終わることもない。

かつて阪神大震災の惨状を撮影したという理由で、宮本は「東日本大震災の現場を撮影しないのか」と幾度となく問われ、戸惑いと疑念を感じたという。現場とは何か。写真を撮影することがむしろ現場からの遠ざかりを意味してしまうことがほとんどであることを知らないのか?多くの災害の写真がつねに終わったあとのイメージを定着させることに留まるのに対して、けれど今回の災害には大きな違いがあった。未曾有の大津波の映像を直に撮影していた被災者たちが存在したのである。

大震災以降、宮本隆司氏が集中して制作した、津波を記録した東日本大震災被災者たちへのインタビュー映像作品を、昨年の神戸に於ける上映につづき東京で初上映いたします。本上映と併せて、宮本隆司氏、美術批評の林道郎氏、本校ディレクター岡﨑乾二郎によるディスカッションを行います。——岡﨑乾二郎


お申し込み方法
*会員以外の方も2,000円の受講料で聴講することができます。
*事務室までお電話/ファックスでまたは直接ご予約ください。会員の方に限り、メール申し込みも受け付けます。
*早々に定員に達することが予想されます。定員に達し次第受付を締め切りますので、お早めにお申し込みください。

■日時:6月9日(土)12:00-14:00
■会場:四谷アート・ステュディウム講義室 【地図】
■受講料:2,000円
■問い合わせ/申し込み先
近畿大学国際人文科学研究所 東京コミュニティカレッジ
四谷アート・ステュディウム事務室
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-5 2F
tel. 03-3351-0591(9:30-17:00、日曜・祭日 休)
fax. 03-3353-7300

●「これからの芸術、これまでの芸術」は通年で開催されるシリーズ講座です。
各回の詳細や受講方法については、決定次第webサイト、Twitter等でお知らせします。


林道郎はやし・みちお
1959年生まれ。西洋美術史、美術批評。上智大学国際教養学部教授。主な著書=『絵画は二度死ぬ、あるいは死なない』(全7冊、ART TRACE)、『ゲルハルト・リヒター』(共著、淡交社)、『シュルレアリスム美術を語るために』(共著、水声社)など。訳書=エミール・ディ・アントニオ+ミッチ・タックマン『現代美術は語る――ニューヨーク・1940-1970』(青土社)など。

宮本隆司みやもと・りゅうじ
1947年東京都生まれ。写真家、神戸芸術工科大学教授。1973年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。解体中の建築や廃墟を撮影した『建築の黙示録』(平凡社)、香港の巨大スラムを撮影した『九龍城砦』(平凡社)で第14回木村伊兵衛写真賞受賞(1989)。阪神淡路大震災の被災現場を撮影した写真「KOBE 1995 After the Earthquake」(建築都市ワークショップ)をヴェネチア日本パビリオンで展示し第6回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展金獅子賞受賞(1996)。「宮本隆司写真展—壊れゆくもの・生まれいずるもの」(世田谷美術館)で第55回芸術選奨文部科学大臣賞受賞(2005)。

岡﨑乾二郎おかざき・けんじろう
1955年生まれ。造形作家。近畿大学国際人文科学研究所教授。主な作品=《あかさかみつけ》《灰塚アースワークプロジェクト》《回想のヴィトゲンシュタイン》《Random Accident Memory》《I love my robots》(Trisha Brownとの共作)など。主な著書=『ルネサンス 経験の条件』(筑摩書房)、『れろれろくん』(ぱくきょんみとの共著、小学館)、『ぽぱーぺぽぴぱっぷ』(谷川俊太郎との共著、クレヨンハウス)、『絵画の準備を!』(松浦寿夫との共著、朝日出版社)、『芸術の設計』(フィルムアート社)など。http://kenjirookazaki.com/