Theory Round Table 講義=中谷礼仁[11月10日]

November 3, 2011|講義

Theory Round Tableでは、中谷礼仁氏(歴史工学家)をお招きし、以下のテーマで講義を行なっていただきます。
なお本講座は「クリティカルな場所(臨界/エントロピー)」を通年の共通テーマとして開講されます。


共同的身体ノート ヌヴェール/ヒロシマ/ボーパール/東北

3月11日の東北大震災以降に訪れた東北の地で私を最も震撼させたのは、大地が沈んで消えているということであった。
マルクスがアジアにおける古代性の特質において述べるように、王権がまず行ったことは、国家としての土地を画定することであった。灌漑をなし、道を造ることであった。このような国家の役割は未だに変わらない。というのも道路は、公共的作業の最たるものだからである。そしてこの土地の画定によって、人間ははじめてその器官的特徴によってもたらされた前、後、右、左という方向概念すら現実のものとして獲得することができるといえよう。土地の消失は、その意味で建築というハードの前提のみならず、その元となる身体性の再構築を促している。これが個人的には最も難儀な解決すべきテーマである。たとえばこれまでの建築における身体論は、もっぱら個人的知覚、特に視覚優位のもとに論じられてきた。しかし今回の災害において身体とそれが身を置く共同体の危機とが決して切り離せないものであることが明らかになった。いわば共同的身体論という範疇の再認識である。今回はその序編としての道半ばのノートを提示する。
——中谷礼仁

申し込み方法
*講座受講生以外の方も、1コマ2,000円の受講料で聴講することができます。(会員以外の方は、別途入会手続が必要です)
*事務室までお電話/ファックスでまたは直接ご予約ください(定員に達し次第受付を締め切りますのでお早めにお申し込みください)。

■日時:11月10日(木)18:30−21:30
■会場:四谷アート・ステュディウム講義室
※外苑前仮校舎での開講です 【地図】
■受講料:4,000円
■お申し込み / お問い合わせ
近畿大学国際人文科学研究所東京コミュニティカレッジ
四谷アート・ステュディウム事務室
〒107-0061 東京都港区北青山2-7-25 神宮外苑ビル3F
tel. 03-3351-0591(9:30-17:00、日曜・祭日 休)
fax. 03-3353-7300


中谷礼仁なかたに・のりひと
1965年生まれ。歴史工学家。早稲田大学理工学術院建築学科准教授。2010年より建築学会発行『建築雑誌』編集長。近世大工書の編纂、古代から現在までの土地形質の継続性と現在への影響の研究、最近では90年前に今和次郎が訪れた民家すべてを再訪してその変容を記録する活動を主宰。編集出版組織体アセテートを作りレアで普遍的な他人の著作を刊行。主な著書=『セヴェラルネス』(鹿島出版会)、『国学・明治・建築家』(一季出版)など。