近畿大学国際人文科学研究所、
四谷アート・ステュディウム公開批評セッションの第一回として、
『プライムオブジェクト――歴史を通り抜ける事物たちの思考』を開催します。
プライムオブジェクトとは、この秋に待望の翻訳刊行が予定されている美術史家ジョージ・クブラーの『時のかたち』(George Kubler, "The Shape of Time", 1962)
の基本概念です。
クブラーは、人間の制作した事物がそれぞれ規範として自律した体系を組織していくという、その独特の思想によって、一元的に閉塞した美術史および文化論の枠組みを大きく乗り超える道を開きました。しかしクブラーの思想が正確に受け継がれてきたとは必ずしもいえません。むしろ20世紀後半から21世紀にかけて、文化はますます一元化へと加速しつつあると見なされ、批評もそれに伴走し無力化していると言われています。
しかし事物の生産過程は決して一元化されることはない。
クブラーにはこうした徹底した技術的な視点がありました。事物の生産を司るのは、事物それ自体である。事物はそれぞれが一つの法である。批評の可能性は、このさまざまにあり得る生産過程に立ち返ることで確実に取り戻されるはずです。
G.クブラー『時のかたち』とほぼ同時期に出版されたE.H.ゴンブリッチ『芸術と幻影』、C.グリンバーグ『芸術と文化』、トーマス・クーン『科学革命の構造』、レヴィ・ストロース『野生の思考』などと共に再読し、今日の批評的膠着をもたらしたパラダイムを解体し、多数性へと再構築を試みるセッション。