Nature of Futureゼミ ゲスト対談 vol.3=いとうせいこう/坂本裕一

January 10, 2013|講義

Yotsuya Art Studium meets DOMMUNE大学
生命とは何か――菌類 KIN KINGDOM GET UP!(邦題 キンキンゲロッパ!)

2012年12月10日、ゲストに坂本裕一氏(公益財団法人岩手生物工学研究センター)をお招きして、いとうせいこう氏による対談シリーズの最終回が行なわれました。「DOMMUNE」の番組としてライブ配信された講義には、第1回、第2回に続き視聴者から多くの反響が寄せられました。

前半は菌の分類についてレクチャーされました。いとう氏を聞き手に坂本氏の講義が進行し、細胞内にDNAを入れる核を持つ真核生物と、それを持たない原核生物の説明から始まり、そのなかで真核生物のきのこ、原核生物の細菌など、菌類の世界を俯瞰するように、さまざまな菌の類別が行なわれました。また、カビという概念は日本特有のもので、ばい菌も人間に悪影響を及ぼす菌の総称であることが紹介されました。そこから、菌の呼称自体が、世界各地の文化や観測方法などの影響を受けて変化するものであり、それが、菌に対して多層的、倒錯的な位置づけを可能にしているとして議論が展開されました。

講義の後半は、きのこの生態について、まず、石炭紀後期に発生したきのこが木を分解出来る数少ない生物であり、それが生まれたことで地球が植物に覆われるのを防ぐなど、生態系に大きな影響を与えていることが解説されました。そして、クローンでも繁殖可能な、きのこの個体の同一性とは何かという問題から、その性のあり方に言及されました。きのこの性は多い場合、数千種類もあり、細胞のなかに核を二つ持ち、細胞分裂時、それが同じペアにならないように細胞核をバイパスによって橋渡し出来る──つまり、きのこは自己のなかに複数性を持ち、さらに、いくつかの交配可能性を持つことが、その複雑性を可能にしていると語られました。それを受け、いとう氏からは、きのこの数千の性が生み出す自己の無さは、危機に瀕した時に分裂的に自己を解き放ち、素早い変化のなかから生存の可能性を探るものであるとの指摘がありました。

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特別協力:DOMMUNE / 宇川直宏
協力:大野ケイスケ


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