鐘ヶ淵の隅田小学校2年生の、教室での生活を活写した作品。羽仁をはじめとしたスタッフは、撮影を意識させないため、何日も教室で過ごすなど工夫をすることで、子供たちの様々な表情を引き出すことに成功した。たとえば、教育実習の先生の話を聞かないで、やじろべえに熱中する子供。威圧的な先生の前で、発言に尻込みする子供の表情などである。学習に取り組む際の子供たちの積極性は、発育、家庭環境といった事情によって異なる様相を見せる。それだけでなく、授業では内気な子供が課外活動で見せる意外な表情など、カメラは子供たちが様々な場面で学習する姿を観察し、記録していく。この手法はグループ学習の場面で特に効果的なものとなっている。知能が高く発言に積極的な子供の完璧主義が、協調性に欠く結果を生む一方で、集中力が切れやすい子供たちのグループは、失敗を笑いに変えることでのびのびと作業に取り組んでいる。この作品で得た手法を、羽仁は以後の作品でさらに展開していくことになる。
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