ことばのpicture books講座 ゲスト講義=前嵩西一馬|姜信子

June 23, 2012|講義

「ことばのpicture books講座 カタリツグ編」(講師=ぱくきょんみ)では、それぞれ以下の日時・テーマでゲスト講義を開催します。

- 7月6日(金)20:00-21:30|前嵩西一馬(文化人類学・沖縄研究)
カタリツグ・プロジェクト  わすれたい、わすれてほしくない

- 7月20日(金)18:30−20:00|姜信子(作家)
「カタリツゲナイ」ことを「カタリツグ」


テーマ

カタリツグ・プロジェクト  わすれたい、わすれてほしくない
前嵩西一馬

忘れたいけれど忘れてほしくない。
そのようなできごとを、
世界はあなたに手渡したことがありますか?

もしそうであれば、あなたの喜怒哀楽の真ん中に
「他者」の体温が宿るでしょう。

あなた自身がこの世から消えてもなお痕跡として残しうる(あるいは残すべき)何かがあると信じる拠り所は、世界の不条理と「他者」への信頼、そして「他者」を信頼したいという希望なのかもしれません。

信頼されうる「他者」として、
私もまた誰かの温もりになれる場所を探します。
そして、Hello!
彼(女)という固有名から声がかかります。

カタリツグという言葉には、pass onもしくはhand downという英語表現が対応できるでしょう。ここではtalk, speak, tellといった発話行為自体は口にされません。そのかわりに、ある「時間」の幅 —— たとえばあなたが生きている「今」や「この世界」—— を超え出ようとする身体性が手を伸ばします。

その「手」が2つの身体——何かを渡そうとする者と渡される者——を撫でるとき、切実なコミュニケーションは、世界中に遍在するカタリツグ・プロジェクトに姿を変えます。

本講では、遠い国のお話や身近な出来事を通して浮かび上がる「共同体の記憶」を扱います。そして「カタリツグ」行為に必然的に内在する(二重の)身体性とそれに付着する感情について、みなさまと共に考える時間を共有したいと思います。


「カタリツゲナイ」ことを「カタリツグ」
姜信子

記憶を語り継ぐ、思いを語り継ぐ、といったことを私たちは決まり文句のようにするすると口にしますが、実のところ、私たちがカタリツグことのできることなど、ほとんどないのではないか。語りうるわずかなことを語っているに過ぎないのではないか? その痛切な認識を出発点に、「カタリツグ」ということを考えてみたいと思っています。

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申し込み方法
*会員以外の方も、1コマ2,000円の受講料で聴講することができます。
*事務室までお電話またはファックスでご予約ください(定員に達し次第受付を締め切りますのでお早めにお申し込みください)。

■日時:
7月6日(金)20:00-21:30|前嵩西一馬
7月20日(金)18:30−20:00|姜信子
■会場:四谷アート・ステュディウム講義室 【地図】
■受講料:各2,000円

■お申し込み / お問い合わせ
近畿大学国際人文科学研究所東京コミュニティカレッジ
四谷アート・ステュディウム事務室
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-5 2F
tel. 03-3351-0591(9:30-17:00、日曜・祭日 休)
fax. 03-3353-7300


前嵩西一馬まえたけにし・かずま
1971年生まれ。コロンビア大学人類学部博士課程修了。文化人類学・沖縄研究。現在、早稲田大学琉球・沖縄研究所客員講師、早稲田大学、明治大学、日本大学にて兼任講師を務める。主な著書・論文=『沖縄学入門――空腹の作法』(勝方=稲福恵子と共編著、昭和堂)、「沖縄で探す「鞘」の言葉――「高度必需品」としての蝶柄、笑い、生物群」『思想』9号(2010年、岩波書店)など。

姜信子きょう・のぶこ/かん・しんじゃ
1961年横浜生まれ。作家。在日であることを出発点に、在日を越え、国家を越え、民族を越えゆく『越境』の旅人として言葉と表現の可能性を探ってきた。近年は「記憶の縛りを越えて語りつぐ」ということを考えている。著書に『日韓音楽ノート』『ノレ・ノスタルギーヤ』『ナミイ! 八重山のおばあの歌物語』『イリオモテ』(以上、岩波書店)、『棄郷ノート』(作品社)、『ごく普通の在日韓国人』『うたのおくりもの』(朝日新聞社)、『今日、私は出発する』(解放出版社)、『はじまれ 犀の角問わず語り』(サウダージブックス、港の人)。訳書に李清俊『あなたたちの天国』(みすず書房)。


今後のゲスト予定
高橋茅香子(翻訳家)
藤富保男(詩人)
藤枝守(音楽家)