「ことばのpicture books講座 カタリツグ編」のための映画鑑賞会[更新]

April 3, 2012|イベント

2012年度「ことばのpicture books講座 カタリツグ編」(講師=ぱくきょんみ)開講にむけた、予習となる映画鑑賞会です。
「ことばのpicture books講座」受講をお申し込みの方か希望する方、もしくは、2011年度までの同講座・「アヴァンギャルドのための絵本講座」を受講した方に限り、参加可能です。
[*本鑑賞会は、研究員、講師による自主勉強会です。]

■上映スケジュール:
第1回|2月24日[金]19:00-『フライド・グリーン・トマト』(130分)[終了]
第2回|3月9日[金]19:00-『アラバマ物語』(129分)[終了]
第3回|3月23日[金]19:00-『カポーティ』(114分)[終了]
第4回|4月7日[土]16:30-『ミザリー』(108分)
*同日ガイダンスおよび相談会開催【詳細】
第5回|4月13日[金]19:00-『イン・ザ・カット』(119分)
*同日17:00より相談会開催【詳細】

■会場:四谷アート・ステュディウム講義室【地図】
■参加無料/予約不要

『ミザリー』、『イン・ザ・カット』に向けて

「ことばのpicturebooks カタリツグ篇」講座開講まで、ひと月となりました。自主上映会さいごの2作品について、鑑賞のポイントを伝えます。1990年代以降の女性映画(女性をテーマとしたという意味で)で、「女性として生きる痛み」をみじんの感傷もなく、見る者に突き付け、けっして忘れることのできなくなる、恐るべき映画だと確信します。この2作品がなければ、今春公開して人気を博した「ドラゴン・タトゥーの女」のイメージは確立できなかったはずです。

『フライド・グリーントマト』で好演したキャシー・ベイツは、『ミザリー』の主演でアカデミー賞主演女優賞を獲得したほど鬼気迫る演技がすばらしい。『イン・ザ・カット』は、主人公の妹役のジェニファー・ジェイソン・リーの存在感に注目してください。ほんとにコワイ女たちですが、その姿は「あなた」に迫っています。

《鑑賞のポイント》
◎アメリカ合衆国東部、白人中流階級の社会
◎ 女性の本能(性のあり方)をまさぐっていく物語展開
◎ 『ミザリー』はひとりの女性、『イン・ザ・カット』は複数の女性がいわばアメリカの語りの系譜の化身となる/さまざまな階級、ジェンダーを生きながら、境界を越えることばたち
◎ 主人公たちの「痛い心」が「ことば」に絡みとられていることが事件を招く
◎ 主人公たちの「ことば」に救済をもとめる方法の混乱と挫折と迷宮入りが、現代のわれわれの抱える問題をあぶり出す

『アラバマ物語』、『カポーティー』鑑賞にむけて

今回の上映会も、アメリカ合衆国南部を舞台にしたものです。
『アラバマ物語』は、まさにアラバマ州という典型的な南部の町で起きた白人女性レイプ事件をめぐる物語です。
黒人差別の社会をあぶり出し、はびこる不正と欺瞞に対して果敢にも挑んでいく弁護士の姿勢をその娘の視点から語られていきます。
1960年代の大傑作とされているアメリカ映画でもあり、また原作もピュリッツアー賞を受賞して名作として読み継がれています。
原作者は、ネル・ハーパー・リーという南部出身の女性です。
この女性作家のことに興味を覚えたのは、じつは、数年前のこと。
映画『カポーティー』で、作家カポーティーの問題作『冷血』の取材協力をしたのが、このネル・ハーパー・リーだったのです。
カポーティーの作品も若い頃翻訳で読んで、ふしぎな感動を覚えたものでしたが、彼とネルが親しく(幼なじみらしい)、凄惨な事件の取材に同行したことを知った時、ひどく揺さぶられました。
稀有な才能をもった作家たちの思考の深淵にふれたような気がしました。
カポーティーは『冷血』以降、スランプに陥り、アル中が原因で急逝し、一方ネルは、『アラバマ物語』以降いわゆるフィクション作品を発表していない、そして彼女は現存しているという事実も、忘れがたいことです。
長々と書きましたが、『アラバマ物語』と『カポーティー』を対にして鑑賞して見えてくるものをキャッチしてほしいものです。――ぱくきょんみ

『フライド・グリーン・トマト』鑑賞にむけて

今回の映画は、ハリウッド映画の文芸作品で、女優たちの演技が印象深いものです。
女性の自立にふれた映画は、1980年代からどしどし製作されてきたと思います。
90年代ではこの映画と「ボーイズ・オン・ザ・サイド」にあるテーマは心の琴線にふれます。
ハリウッド映画という巨大な映画産業は、つねに時代を読むキーを示しますから、アンテナは張っておかないとなりません。
人間性を問う秀逸なドラマには、時代を経ても色褪せない魅力があることは、映画鑑賞の醍醐味です。

今回、この映画を鑑賞するためのポイントを挙げておきます。
◎2012年度は、マーク・トウェインの作品を読みまので、作品背景の世界/南部ミシシッピ河流域の生活を感じてほしい。
◎現在のふたりの女性が出会い、悩める中年女性が老婦人から昔の話を聞いていく、という語りのスタイル。
◎老婦人の思い出話の中で、語り継がれてきたもの、そして語り継いでいくものへの橋渡しになる、心のあり方。
◎アメリカ南部の生活をいきいきとさせている「ホラ話」(tall tale)がドラマの展開のなかで、どう示唆されるか。
◎昔の生活を描きながら、現在の人間が抱える問題を明らかにして、その乗り越え方を示す表現方法。

それでは、みなさん、感想を話し合える時間を愉しみにしています。――ぱくきょんみ

■お問い合わせ:
四谷アート・ステュディウム事務室(校舎2F)
tel. 03-3351-0591(9:30-17:00、日曜・祭日 休)
fax. 03-3353-7300