「ことばのpicture books講座 あわいに在る編」のための映画鑑賞会[更新]

May 12, 2011|イベント

2011年度「ことばpicture books講座」開講にむけた、予習となる映画鑑賞会です。
ことばのpicture books講座」受講をお申し込みの方か、希望する方、もしくは、2010年度までの同講座・「アヴァンギャルドのための絵本講座」を受講した方に限り、参加可能です(予約不要)。
[*本鑑賞会は、研究員、講師による自主勉強会です。]

●第5回『スウィーティー』(監督:ジェーン・カンピオン)を追加しました(*)

■上映スケジュール:
第1回|4月5日(金)18:30-『道』(104分)[終了]
第2回|4月15日(金)18:30-『プーサン』(98分)[終了]
第3回|4月22日(金)19:00-『少女ムシェット』(78分)[終了]
第4回|5月6日(金)18:30-『山椒大夫』(124分)[終了]
第5回|5月20日(金)19:00-『スウィーティー』(97分) *

■会場:四谷アート・ステュディウム講義室【地図】


映画鑑賞会に寄せて

ぱくきょんみ

少女のころ、映画に登場する「少女たち」はあまりに眩しく輝いていて、わたしは含羞んだ。『禁じられた遊び』『キューポラのある街』。思春期に入ると、「少女たち」がまとう暗い翳りにひきこまれていき、深い共感を覚えた。『シベールの日曜日』『初恋 地獄篇』『少女ムシェット』。そして20代、30代、40代、50代を迎えるようになって、「少女たち」は生きる上で避けられない疼きや痛みを分かち合ってくれたことに気づいた。だから、わたしはときどき映画の「少女たち」に会いにいきたくなる。暗闇の中でひとり、分かち合うものにふれるだけで、いい。わたしはこのごろこう考えられるようになって心身かろやかになったんだ、と胸の内に告げることもある。
 
上記の拙文は、イラク出身のゴバディ監督の映画『亀も空を飛ぶ』のカタログに寄稿したものである。

ことしのテーマ「あわいに在る」のために、事前に鑑賞してもらいたい映画をたくさん挙げたが、ブレッソンの『少女ムシェット』は先週上映会もできた。映画という表現はまさに「あわいに在る」ものだ。フィクションせよ、ノンフィクションにせよ、カメラの眼はある考えや意志をもっているけれど、仕上がった映画は映像と鑑賞者のあわいに漂い出す。映像の人物と鑑賞のあわいを行ったり来たりする。(だいたい映像の人物を演じる者もその「人物」とのあわいで不安がっている方が多いだろう。)それがまさに映画の醍醐味かもしれない。反対に言えば、その「あわい」を感じさせない映画は情けないものだ。こういう点も留意して、自主上映会の映画を鑑賞していただきたいと思う。

さて、わたしにとって、映画の中に生涯忘れられない少女のともだちがいたことを意識するようになったことと、フォークナーの小説の描く少女/女性像がまた重なってくる。

アメリカ南部出身であり、生涯そこに根を生やして、「ヨクナパトーファ」という文学世界を掘り起こし続けたフォークナーの文学手法も、言語を越えて21世紀現代文学に定着した「映像的」表現であることも6月からの講読で考えていきたい。何度か掲示しているが、講読テキストは『八月の光』(加島祥造訳/新潮文庫)である。

5月の自主上映会は、
溝口健二
羽仁進
をとりあげたい。

1950年代の溝口健二作品は、ヌーヴェルヴァーグの気鋭たちにもっとも影響を与えたと言われる。まったくあたらしいタイプの女優を輩出させた、その流れの中に、じつは『山椒太夫』の安寿や、『少女ムシェット』のムシェットの少女の絶望が沈んでいることを確かめるのもスリリングである。


■お問い合わせ:四谷アート・ステュディウム事務室(校舎2F)
tel. 03-3351-0591(9:30-17:00、日曜・祭日 休)
fax. 03-3353-7300