批評(創造)の現在シリーズ――4 講師=手塚夏子/三輪健仁/高嶋晋一
われ散歩する、ゆえにわれ散歩道である――観察・トレース・感情移入
■講師/テーマ/アブストラクト:
手塚夏子[ダンサー・振付家]
水面の観察――映し出すモノの内と外とその境界について
この夏、息子と海辺で遊んだ時、かなりの引き潮であっという間に海の水が遠くに行ってしまって、砂の上に取り残された。足下を見ると小さな泡が湿った砂の間にぷくぷくと湧いて、よく見るとたくさんのヤドカリやら蟹やらわけのわからない生きもの達ももぞもぞと動き出した。こうして立っている場所も、こういう知らない蠢きや関わりが動き続けているし、私自身のからだも、知っていると思い込んでいる表面の中にわけのわからない蠢きが潜んでいる。それが面白くて水面下の物事を感じ取ることばかり熱中してきたけれど、ある日、水面そのものにふと視点を移してみると、とても複雑で魅力的なのを発見した。
からだという水面に映し出された関わりの有り様を、多角的に観察したい。
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三輪健仁[東京国立近代美術館研究員]
ふりつけのふり――記録される身体/記録する身体
映像とは記録する装置である。1960~70年代、アーティストによる映像作品の制作が活発になる。たとえばアコンチ、ナウマンなどのヴィデオ作品に見られるように、それらの映像のひとつの特徴は、アーティスト自身の身体が作品の素材として用いられることである。或る規則に従い、行為を遂行する身体を、映像は記録している。
身体が記録された映像を眼にしたとき、行為する本人も予期せぬような運動を発見することがある。それは超人的な動きであったり、ぶざまな身体であったり、さまざまだ。たとえば描画するマティスの右手、ポーリングするポロックの四肢、アトリエの中を歩くナウマンの直角の脚。これらの運動は、何らかの方法(訓練?習慣?技術?)によって身体に刻まれ、定着しているものだ。身体とは記録する装置である。
60~70年代の映像作品などを手がかりに、記録という視点から身体と映像の関係について考察したいと思います。
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高嶋晋一[美術家]
石がいる 人がある(仮)
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岡﨑乾二郎(質疑応答)
この講座は「岡﨑乾二郎対談シリーズ」と連動した連続講座です。
ピックアップ受講(単独聴講)は本校受講生、会員にかぎり可能です。
>>シリーズ受講の詳細
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申し込み方法
*本校受講生、会員にかぎり2,000円の受講料で聴講することができます。
*事務室までお電話/ファックスでまたは直接ご予約ください(定員に達し次第受付を締め切りますのでお早めにお申し込みください)。
■日時:10月3日(土)18:30-21:30
■会場:四谷アート・ステュディウム講義室
■受講料:2,000円
■お申し込み/お問い合わせ:
近畿大学国際人文科学研究所東京コミュニティカレッジ
四谷アート・ステュディウム事務室
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-5 2F
tel. 03-3351-0591(9:30−17:00、日曜・祭日 休)
fax. 03-3353-7300
手塚夏子|てづか・なつこ
ダンサー、振付家。1996 年より、マイムやダンスの境界をさまよいつつ、既成のテクニックではないスタイルの試行錯誤をテーマに創作活動を続ける。2001年より自身の体を観察する《私的解剖実験シリーズ》始動。《私的解剖実験-4》より、関わっているときの体の観察を経て、関わりの観察へと移行し、現在に至る。体について様々な雑談をするカフェイベント「カラダカフェ」や、人のダンスの手法について思考し体で試行する「道場破り」など、自主企画のイベントを不定期に行う。
http://natsukote-info.blogspot.com/
三輪健仁|みわ・けんじん
1975年生まれ。芸術学。東京国立近代美術館研究員。立教大学非常勤講師。主な企画展覧会=「ヴィデオを待ちながら――映像、60年代から今日へ」「壁と大地の際で」「持続/切断――毛利武士郎・村岡三郎・草間彌生・河原温」など。主な論文=「振子、円、そして螺旋へ――パウル・クレーの『生成』と『文字』」『issues』5号(多摩美術大学芸術学科)、「自由のためのエクササイズ:1950-64年のブラジル美術」『ブラジル:ボディ・ノスタルジア』カタログ(東京国立近代美術館)など。
高嶋晋一│たかしま・しんいち
1978年生まれ。美術家。近畿大学国際人文科学研究所研究員。主な作品=《One foot on the moon series》《Not a face, use the head》など。著書=『芸術の設計』(共著、フィルムアート社)。評論=「握った拳で握手は可能か──橋本聡《Wake up. Black. Bear.》について」、「行為者なしの行為 ACTION WITHOUT ACTOR――1960-70年代におけるパフォーマンスの問題系」(図版構成、翻訳[協力]=中井悠)『述 3――近畿大学国際人文科学研究所紀要』(明石書店)など。