批評(創造)の現在シリーズ――3 講師=大橋完太郎/橋本聡/松井勝正
四谷階段――失われた足を求めて
現在もっとも切れている若手批評家、創作者が登場し、加熱した議論を展開するレクチャー・セッション、「批評(創造)の現在シリーズ」第3回を開催します。レクチャー後にはディスカッションを行ないます。
■講師/テーマ/アブストラクト:
大橋完太郎 [思想史・表象文化論]
ガラパゴス・ジャパン?
「ガラパゴス」は独自の進化を許容する隔絶された環境を意味する.
この生態環境論的視点を適用するならば,往々にして「日本」,とりわけ日本の技術がガラパゴス的に映ることも多い.使いこなせないほど多くの機能が充填された携帯電話を筆頭に,DOS/Vシステムに対抗したPC9800シリーズ(絶滅),あるいはOS「TRON」など,例を挙げればきりがないだろう.こうした視点から,仮名文字や漫画,あるいは日本近代の問題等も,ある種の「ガラパゴス化」として考えることはできないだろうか? 筆者の希望だが,おそらく,今となっては,「ガラパゴス」は「帝国」に対抗しうる一つの拠点となりうる.(もちろんかつてガラパゴスが帝国となる野望を抱いていた時期もあったということは覚えておくべきだ).だが,どのようにして? いくつかの文化的コンテンツを解釈しながら,その背景にあるメンタリティーを解釈し,「ガラパゴス・ジャパン」の展望を考える機会にしてみたい.
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橋本聡[美術家]
in This River
(低い声で)
衣服としての「人間」
追い剥ぎと継ぎ剥ぎ
カテゴリーの凝固と誘拐
カテゴライズを妖怪する
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松井勝正[芸術学]
ドガ――永遠の現在
例えば、ドガを歴史の中のどのように位置づけるべきだろうか。彼は絵画に革命をもたらしたとされる印象派に属しながらも、アングルを崇拝し色彩よりもデッサンを重視した。一見反動的に見える彼はどのような時間認識を持っていたのだろうか。
ドガの絵には歴史がない。絵の登場人物達はいつもすれ違い、そこではなんの出来事も生じない。出来事はモチーフ=動機として古典的な歴史画を支えてきたものであり、出来事の消失はドガが絵を描く動機を見えなくしてしまうように思われる。彼らはいつも出来事、本番の手前で練習をし、身支度をし、ウォーミングアップをし続けている。
だが、彼らは互いに無関係であることによって、奇妙な混合を引き起こす。ちょうど印象派の併置された色面が混じり合うように、彼らは混じり合い奇妙な時空間を表現する。
そうした、ドガの空間、時間分析を通して、「現在」という時間を考察してみたい。
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質疑応答:岡﨑乾二郎[造形作家・本校ディレクター]
この講座は「岡﨑乾二郎対談シリーズ」と連動した連続講座です。
ピックアップ受講(単独聴講)は本校受講生、会員にかぎり可能です。
>>シリーズ受講の詳細
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申し込み方法
*本校受講生、会員にかぎり2,000円の受講料で聴講することができます。
*事務室までお電話/ファックスでまたは直接ご予約ください(定員に達し次第受付を締め切りますのでお早めにお申し込みください)。
■日時:9月24日(木)18:30-21:30
■会場:四谷アート・ステュディウム講義室
■受講料:2,000円
■お申し込み/お問い合わせ:
近畿大学国際人文科学研究所東京コミュニティカレッジ
四谷アート・ステュディウム事務室
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-5 2F
tel. 03-3351-0591(9:30−17:00、日曜・祭日 休)
fax. 03-3353-7300
大橋完太郎|おおはし・かんたろう
1973年生まれ。玉川大学非常勤講師。専門は思想史・表象文化論。17-18世紀の哲学・思想のテキストを題材に、近代、および近代的人間と相関的な概念的布置や形象を解釈することで、人間像の批判的再構築を目指している。著書に『ディスポジション:配置としての世界』(共著、現代企画室)、論文に"La Question du monstre chez Diderot dans Le Rêve de d'Alembert", Etudes de la langue et littérature françaises, n.89.(日本フランス語フランス文学会)、「自由の徒弟時代:スピノザ『エチカ』における理性の諸相」『UTCP研究論集』第6号(UTCP)、「タブローを越えて:『百科全書』とスクリーン」『水声通信』No.11(水声社)など。
橋本聡|はしもと・さとし
1977年生まれ。パフォーマンスを伴ったインスタレーションなどを発表。2006年四谷アート・ステュディウム最優秀アーティスト賞受賞。2007年作品カタログ『Wake up. Black. Bear.』WORKBOOKより出版。2008年Asian Cultural Councilのグラントにより渡米、ISCP(ニューヨーク)に参加。2008年の作品=《frame》《FULCRUM》《FLOWER》《fruit》《Focus》《foot》など。2017年《未来芸術家列伝IV》(東京)。
*『artictoc』vol.4に《FLOWER》写真とコメントを掲載。
松井勝正|まつい・かつまさ
1971年生まれ。芸術学。主な論文=「壁に書かれた暗号――バロックのインターフェイス」『季刊InterCommunication』65号(NTT出版)、「瀧口修造のスケッチブック:批評的読解」『多摩美術大学研究紀要』19号(多摩美術大学)、「ダンスの色は何色」『Purple-Green』1号、「クレーと表現主義」『issues』5号、「無地――マチスの色彩構成について」『issues』4号(以上、多摩美術大学芸術学科)など。