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Experiment|実験コンセプト

10|草刈思朗

an organ transplant

実験の目的

「観測者と観測装置との境界は任意である」というあまりに二十世紀的な理論的前提を踏まえたうえで、そこにいたる近代科学の成立基盤となった実験装置を再検証し、そこに潜む実験の条件を探る。

実験の仮説

よく知られるように、ガリレオ・ガリレイ(1564〜1642)はしばしば最初の物理学者とみなされている。これはギリシャ哲学を根拠とした思弁的な運動研究に抗して、ガリレイが実験によって他者と共有可能な理論を構築することを可能にした事実による。では、この実験とはどのようなものだったのか? ガリレイは、斜面からタマを転がし、ある時間がたつとタマはどのくらい進んでいるのかを調べ上げた。この実験によって、計量化された時間と距離(空間)が結び合わされ、他者と共有可能な時空間が一挙に出現したのだ。ところがこの計量可能な時間は、何分何秒といった我々が想像するような均質なグリッドに基づくものではなかった。例えば今日我々が容易に手にすることが出来るストップウォッチ、これをガリレイが使うことが考えられるだろうか。実際この実験における時間とは、自分の脈拍を数えることで計量された時間だったのだ。いうまでもなく、この実験結果を完全に再演することは不可能である。しかし、にもかかわらずその実験結果が公共性を帯びるとされるのは何故なのか。むしろここには科学的真を支えるある「確かさ」が積極的に存在するとはいえないだろうか。

実験の方法

脈をとってみる。