About
Information
Program
Experiment
 

Experiment|実験コンセプト

06|北川裕二

ひとつの声とふたつのドローイングによる"Trio"第12番

実験の目的

共同体の身体とはなにかを捉え直す。

実験の仮説

身体は、利き手を中心に機能する。したがって、表象とは、利き手の世界といってよい。
だが身体は、利き手の世界が実現されるそのときにおいてすら、異なる世界への「線」を引こうとしている。鼻は鼻歌を歌い、胃袋は空腹を訴え、足は水虫でかゆい。例えば、右手で円形を、左手で四角形を同時に描くと、円形に四角形の要素が、四角形に円形の要素が相互に転写され、円形でも四角形でもない利き手の世界とはいえない形を表象する。
ところで、日常の基礎を形作っているのはある種の習俗・儀礼だが、この同じ空間内部では、それとは反対の「野蛮」な行為が対照して、それらを確定づける。シャーマンのトランスレーションとは、共同体の身体がつくる時空の強化・組み換えのことであるのだから。この実験の線上には、共同体批判と新たな生成が目論まれているが、まずは、ひとりの利き手の秩序と非利き手の「野蛮」を同時に生成させ、身体の分裂する基点を浮上させる。

実験の方法

壁面に貼った2枚の紙に、右手左手にオイルパステルを持ち、同時に異なる線、像を描く。このとき眼にはアイマスクをして、描いているものが見えないようにする。同時に奇声とも詩とも歌ともとれる声-言葉を発する。これらが作動するための譜面-地図は、無意識下も含めた「記憶」ないし「歴史」である。