いま___媒質 | かみ 木炭 パステル コンパネ クリップ
またその輪郭は、タッチでヴォリュームを切り出す際に、色面の端に押し出された境界面に他ならなかった。気がつけば、色面のいたるところにそれぞれある方向をもつタッチが認められる。そのタッチもまた、暫定的な輪郭線(面)と同様に、タッチが生んだヴォリュームを新たなタッチが迎え入れつつ、別な方向へとその力を追い返していくものだった。このようにして、いわば方向線がヴォリュームとなってできた色面は、大気のように厚い層をもっている。そして、隣り合った色面の性質もまったく異なっているかのようだ。それらを繋ぎ合わせるのは、踏み出した脚がそのまま次に繰り出す一歩の軸足となるような ステップの如きタッチなのである。
(文章協力 印牧雅子)
画面に置かれた色彩が即座にヴォリュームと化し、それを受けて次のタッチが置かれていく。その過程を、大気のようなものの一部を画面へとうつしとり、置き換え、還元することと例えてみる。それは、本来見えない大気を、描くことで見えるようにすることである。そうして置かれるタッチによって、ひと塊の大気が取り出されたと仮定すると、そのとき同時に、抉り取られたあとに残った周囲の大気が感じられるだろう。描くことは、つねに、描かれた輪郭をはみ出すヴォリュームをつくることとなる。このように芝の制作は、仮想上の大気を創出しつつ進められ、その仮定されたヴォリュームに影響されつつ、輪郭線は序々に角度をずらされ変化していく。