岩波映画を観る 関連企画
「反核」映画上映とマッド・アマノ講演会 ― 抵抗の手法としてのパロディ

GALLERY OBJECTIVE CORRELATIVEでは、記録映画史に重要な足跡を遺してきた岩波映画の上映会をシリーズ化して行ってきました。今回は、シリーズ「岩波映画を観る」関連企画として、「核」という現在我々にとってなお未解決で切実な問題をテーマとした1982年製作のドキュメンタリー4作品を上映します。
1980年代の世界的な反核運動のさなか、日本では、アメリカに眠るカラー記録映画フィルム(約10万フィート)を市民運動によって入手、反核・平和の記録映画を国際的に製作・上映する「10フィート映画運動」が展開されました。『にんげんをかえせ』『予言』は、この運動によって製作されました。このような背景の中で、同じ頃アメリカで製作されたのが、パロディの手法を駆使したアーカイヴドキュメンタリー[*1]の傑作として知られる『アトミック・カフェ』でした。同作品を、手法に類似する要素が見られる『原発切抜帖』と併せて参考上映します。これらファウンド・フッテージ(映像素材)を用いて作られた4作品をとりあげ、映像における出来事の記録の方法を探ってゆきます。

また、パロディ作家マッド・アマノ氏を迎えて「反核活動とパロディの手法」というテーマで講演会と作品上映を行います。氏は映画監督マイケル・ムーアに、広島・長崎の原爆投下をテーマにしたドキュメンタリー映画の製作を依頼する運動を展開していることでも知られています。

*1 アーカイヴドキュメンタリー : 政府広報やニュース映像、産業PR映画などの、パブリック・ドメイン(公共財)となっている資料映像を引用して作られたドキュメンタリー作品。

なお、企画構成にあたり、以下の著書から重要な示唆を受けた。
佐藤真『ドキュメンタリー映画の地平』(上・下)凱風社、2001

■会期 : 2005年7月1日(金)・2日(土)

■上映スケジュール

7月1日(金)
16:00−
プログラム A[132min]
『アトミック・カフェ』K・ラファティ他 ※DVD上映/『原発切抜帖』土本典昭
18:30−
プログラム B[61min]
『にんげんをかえせ』橘祐典/『予言』羽仁進

7月2日(土)
13:30−
プログラム A[132min]
『アトミック・カフェ』K・ラファティ他 ※DVD上映/『原発切抜帖』土本典昭
16:00−
講演「反核とパロディ」+作品上映 ゲスト:マッド・アマノ
18:00−
プログラム B[61min]
『にんげんをかえせ』橘祐典/『予言』羽仁進

■定員 : 50名(先着順)
入替制/当日チケットを発行
初回1時間前に受付けます。

■入場には配布資料を含む上映実費として以下が必要です :
1プログラム=500円
2プログラム=700円
※ 7/2講演会は上映会の半券でご参加いただけます。

■会場/お問い合わせ
GALLERY OBJECTIVE CORRELATIVE
近畿大学国際人文科学研究所
四谷アートステュディウム/東京コミュニティカレッジ1F
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-5(JR・東京メトロ四ッ谷駅徒歩3分)
Tel : 03-3351-0591 Fax : 03-3353-7300

■主催 : 近畿大学国際人文科学研究所
■企画 : 四谷アート・ステュディウム アートプロデュース講座

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■上映映画作品 :

プログラム A[132min]

『アトミック・カフェ(ATOMIC CAFE)』
1982/アメリカ/87min/カラー/※ DVD上映
監督・製作・編集 : ケヴィン・ラファティ、ジェーン・ローダー、ピアース・ラファティ
英語版日本語字幕 翻訳 : 青山南

『原発切抜帖』
1982/45min/カラー/16ミリ
製作 : 青林舎
企画・監督・脚本 : 土本典昭
台詞 : 長瀬未代子
撮影 : 渡辺重治
音楽 : 高橋悠治と水牛楽団
編集 : 土本典昭

プログラム B[61min]

『にんげんをかえせ』
1982/20min/カラー/16ミリ
製作 : 子どもたちに世界に!被爆の記録を贈る会映画製作委員会
監督 : 橘祐典
撮影 : 南文憲
音楽 : いずみたく
編集 : 矢走直子

『予言』
1982/41min/カラー/16ミリ
製作 : 子どもたちに世界に!被爆の記録を贈る会映画製作委員会
監督・脚本 : 羽仁進
撮影 : 奥村祐治
音楽 : 武満徹
照明 : 五十畑憲一
編集 : 沼崎梅子

※ 「10フィート映画運動」反核・平和の記録映画三部作に含まれる

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マッド・アマノ・プロフィール
1945年、疎開先の栃木県小山で小学校1年生の時、太平洋戦争の終戦を迎える。生まれ育った東京ではB29爆撃機の空襲を体験、そして父親が掘って作った防空壕に避難したり小山では戦闘機の機銃掃射という恐怖の体験も。東京芸術大学美術学部を卒業後、家電販売会社の宣伝部で広告の仕事を11年続け、独立後、家族とともにアメリカ、ロサンゼルスに移住。反原発運動などの市民運動をつぶさに見る。原爆短編記録映画『にんげんをかえせ』の英語版ナレーターを著名な反戦女優、ジェーン・フォンダに依頼、ナレーション録音に立ち会う。英語版原爆写真集の販売をボランティアで行う。写真週刊誌「FOCUS」にパロディを20年間連載。帰国後、会社「ビッグバン」創立。WEBサイト「THE PARODY TIMES」開設中。
パロディ専門雑誌「ジャパンポンチ」(5月創刊・ビジネス社)編集顧問。原爆投下の責任を問う絵本『リトルボーイとファットマン』(七つ森書館・7月発売)など著書多数。