長野県新野地方に伝わり、新しい年の五穀豊穣、子孫繁栄を祈願し仮面をつけた多くの神々が登場するという「新野の雪まつり」。古代の祭りの神人交歓の情景をとどめた日本の芸能のルーツを今に伝える祭りである。本作品はある年の雪まつりの準備から終わりまでの記録であるとともにそこに暮らす人々の生活とまつりのかかわりをも描いた。羽仁進独特の、場面ごとに効果的に転換する音楽(西洋音楽と日本古来の祭事雅楽)や人物の動きを詳細にとらえたカメラワークがより画面に生気を与えている。印象的なのは、荒々しいまつりの場面から一転して現れる穏やかなせせらぎの美しさだ。このような場面の対比から、厳しい自然や生活を乗り越えようとする人々のたくましさを感受することができる。
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