生活水準改善のために、厚生省が岩波映画に依頼した教育映画の一つで、水道普及の必要性と地域ぐるみの実践を前提とした作品である。
水を運ぶ人を描いたエジプトの壁画に始まり、美しい水源を見せる冒頭は、この映画が単なる教育映画ではなく水と人との根源的なかかわりを伝えるひとつの物語であることを暗示する。日本海の漁村や新潟の町など、水道のない地域での生活をスナップでとらえながら途中顕微鏡による微生物の映像を挿入することで、その不自由さ、不衛生さを示していく。しかしカメラによって観察され、切り取られたシーンの中に存在する人々は切実さに欠けるようでもある。セリフがなく、ナレーションだけが物語ることにもよるが、羽仁が求めたのは「人々の感情」情」ではなく、「生活そのもの」を見せることであったことがわかる。記録された複数の生活の断片こそ真実をとらえるためのモチーフであり、それらをつなぎあわせたひとつの物語は、その真実の重みゆえに、観るものを導くのに十分な力をもっているのである。
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