日本の舞踊を、その発生から、映画が撮影された地点までをいわば歴史的に捉える。20分という短い時間ながら、日本に起こった舞踊を系譜的にたどり、かつそれら舞踊の現在における様相を存分にみせている。民間に伝わる祭・儀礼から、舞踊的要素を見出し、記録したシーンにはじまり、盆踊り、雅楽、能、歌舞伎舞踊、歌舞伎、日本舞踊、現代舞踊などそれぞれの舞踊のシーンは、ほとんどが長回しで撮られている。また、能のある動きが、歌舞伎舞踊においてどのように変容し、そこで新たな型が形成されたかなど、個々の舞踊の要素間の仔細な分析が、映像をとおして明確におこなわれる。ここでは、それぞれの舞踊がルーツを部分的に分かち合うと同時に、異なっているという点が明らかにされ、全体の構成を担うはずであった「日本の舞踊」という包括的な視点を確保することの難しさが露わになってくるだろう。
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