青梅市立第6小学校で行われているグループ指導教育の実践を紹介。そこで行われる「話し合い劇」とは、状況設定と配役だけがあらかじめ決められた中で、生徒はそれぞれの役の立場から即興で意見を言い合い、いかにその設定された問題を解決していくかという劇である。たとえば、男の子は女の子役に、女の子は男の子役になって、それぞれ自分たちが遊ぶ運動場の場所取りを主張し合う。普段実際に起こっている問題を、それぞれ立場を入れ替え議論し妥協点を見い出そうとするもので、そこではいつも自分が言っていたことを相手が言い、言われていたことを今度は言う。彼らにとってそこで発せられる言葉は、こちらに属しながらもあちらに属する幾重にも重なり合った言葉となり、様々な立場に立ち状況を考えるようになるだろう。劇という虚構空間であるがゆえに現実の構造を生々しく立ち現せるこの「話し合い劇」とは、後の『不良少年』などへと繋がる、羽仁進の方法とも重なる。
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