モノクロ画像の中で、子供たちの「絵」の部分のみをカラー映像にするなど、新鮮な手法によって描き出されたこの作品は、教育記録映画でありながら、娯楽映画と劇場併映された羽仁の劇場デビュー作。『教室の子供たち』撮影中に出会った「問題児」の少年が描く絵。その少年からはおよそ想像できない、厳格で静寂さをたたえた画面に驚き、この違和感を追求する事で「何かが起こる、起こりうる(『人間的映像論』)」と確信して製作。自己表現が苦手な小学1年生の生徒2人を中心に、彼らの絵や製作物に反映された心情心理の解説。自己表現能力の発達とともに、彼らの作画が変化していく様を、入学から9ヶ月間に渡って撮影。創造美育教育活動メンバーである図工主任の授業風景を中心に、子供達の社会環境も、時に隠しカメラを用いて映し出す。鮮やかな色彩に「ノイズ」のように被さる音楽を効果的に用いることで、ナレーションで語られる以上の「何か」を子供たちの絵が内包していることを示唆している。
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