記録の方法ー大浦信行の抱え込んだ日本
映画『日本心中』『遠近を抱えて』と版画作品により美術家・大浦信行の自画像を解く

大浦信行は、1949年生まれの美術家。代表的な作品のひとつにニューヨークで制作した版画シリーズ「遠近を抱えて」(1982-85) があります。
「自画像」として制作されたこの作品は、天皇の画像を使用していたために、作家の意図したところからは離れて理解され、美術家の表現、美術館の在り方をめぐる多くの議論を巻き起こしました。今回上映する映画『遠近を抱えて』は版画作品の議論の渦中に製作されたものであり、この問題をメタフィジカルな次元に置き換え取り組んだ作品です。また映画『日本心中』は、一貫して戦前.戦後の思想の矛盾と格闘しながら美術の在り方を思考してきた批評家.針生一郎の独白を軸に、フィクションとノンフィクションを交差させながら、「日本」という国の一断面を描き出しています。
今回の企画は、大浦信行監督映画『日本心中 針生一郎・日本を丸ごと抱え込んでしまった男』(2001)、『遠近を抱えて』(1994)の上映、ならびに版画作品の展示を行います。
どれも「自画像」と言うこともできるこれらの作品を通して美術家.大浦信行の実像を探るものです。

この秋、ポレポレ東中野にて大浦氏の新作『9.11-8.15日本心中』が公開されますが、前作にあたるこれらの作品をご覧になることで、大浦作品をより深く理解する機会となれば幸いです。

■会期 : 2006年10月17日(火)─22日(日)

■上映作品 :
『日本心中 針生一郎・日本を丸ごと抱え込んでしまった男』 2001年 カラー 87分 ビデオ
『遠近を抱えて』 1994─95年 カラー 90分 ビデオ

■展示作品 :
シリーズ「遠近を抱えて」 1982─85年 リトグラフ、シルクスクリーン 57×77cm
※ただし映画上映と作品展示を同じ会場で行うため上映中は、作品を鑑賞することができないことをご了承ください。

■上映/イベント・スケジュール :

日付 開場 遠近を抱えて 日本心中 イベント
17日 17:00 19:00-20:30 大浦信行/針生一郎による対談
「『日本心中』ー行動する思想の根拠」21:00-
18日 17:00 19:00-20:30 20:40-22:10 大浦信行によるトーク
「自画像とは何か」
19日 17:00 19:00-20:30 20:40-22:10 大浦信行によるトーク
「版画作品《遠近を抱えて》から『日本心中』制作までの道程」
20日 17:00 19:00-20:30 20:40-22:10 大浦信行によるトーク
「なぜ今『日本心中』なのかーそこで捉えようとした日本とは」
21日 12:00 13:00-14:30 15:00-16:30 大浦信行/峯村敏明による対談
「『日本心中』ー表象されたイメージが示唆するもの」17:00-
22日 12:00 13:00-14:30 15:00-16:30 大浦信行/岡崎乾二郎による対談17:00-

※入場には配布資料(全135ページ)を含む上映実費として以下が必要です。
[1000円/1日]
※各回先着順50名

■主催 : 近畿大学 国際人文科学研究所

■企画 : 四谷アート・ステュディウム アート・プロデュース講座
(担当:鬼丸・中野・滝本・神谷)

■協力 : シネマチック・ネオ

■会場 :
GALLERY OBJECTIVE CORRELATIVE(四谷アート・ステュディウム1F)
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-5(JR四ッ谷駅徒歩3分)
Tel : 03-3351-0591 Fax : 03-3353-7300