2003.05.17 岡崎乾二郎+松浦寿夫 | ||
対談〈3〉── 多方向的な転用・可能性の開放 |
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岡崎 話は変わりますが、ちょうど同じ時期にRAMで(新宿のインターコミュニケーション・センターで開催中の)E.A.T.(Experiments in Art and Technology)についての勉強会もやっていたの。中心化されたテクノロジーを解体して再編成するということでは、反戦と奇妙にシンクロしてしまった。ビリー・クルーヴァーというカリスマ天才科学者が率いていたグループで、ジョン・ケージとかラウシェンバーグとかと協同で仕事をしていた。ビリーは、退屈なテクノロジーはダメだというのね。エンジニアにとって「カオスこそが最大の防御だ」という。コンフュージョン(混乱)を歓迎しなさい、と。歴史的にいっても、テクノロジーの九十八パーセントは、軍事技術として開発されたものだった。いいかえれば、戦争という目的なしでは解体してしまうバラバラな多様性、矛盾を含んでいる。E.A.T.はこうしたテクノロジーの潜在的可能性を解放し戦争から解体して、別の方向に開こうとしたのね。 田口 事の起こりから反戦なわけですね。 岡崎 そうそう。それはある意味では、すごく些末な目的に転用することに見えたりもするんだけど。軍事目的や宇宙開発用のサンドイッチを包むために開発された素材で、ウォーホルが宙に浮かぶ枕をつくったり。基本的には、転用。ビリーさんには不可能なことはなにもない、という。可能か不可能かの判断は、テクノロジー自体でなくて、それを使用しようとする目的によって、規定される。その枠の問題である。だからどんな課題でも、しっかり問題が把握されていれば、必ず答えはでる。しかも枠は一つではない。 BT 最後に、松浦さんに。今回の建築「でも」に参加した感想を。 松浦 僕はもともと、芝公園(のデモ)に行く予定だったのですが、その前に東京ジャーミイで合流しました。岡崎くんの考えも聞きたかったから。 岡崎 みんな感銘を受けて、建築に見入ってしまった(笑)。 松浦 うん、あれはね。それはいい経験だったと思う。 岡崎 建築ツアーは、あえていうと本来的に文化的なイベント、それ自体で完結した目的のものだったんだけど、こんな文化享受を真剣にやっていれば、それが自動的に反戦になるはず。というのも、戦争は、ひとつの文化、まさに虚構として組織され、しかも徹底的に質の低い虚構に基づいているんだから。文化を真剣に見つづけているだけで、批判が生まれるんだよ。 松浦 うん。そういうことだと思う(笑)。あのとき(建築ツアーが長引いて)、デモに遅れそうだなとちょっと心配したけれど(笑)。友だちもいるし、楽しいから、それじゃ、行こうか、というのでね。 岡崎 またなにかやりましょう。これまでもやってきたようにね。 松浦 そうだね。 |
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