2003.03.12 RAM LAB(岡崎乾二郎・田口卓臣)

岡崎乾二郎「いかなる悪よりもおそろしいもの」

端的に今回の
アメリカのやりかた が 
通ってしまうことが
恐ろしい


今後
たとえ 形式的であっても 論理的な議論
というものが いっさい
意味を失ってしまう


反戦に対して
フランスや ロシアですら 利権がからんでいるのは
確かでしょう
金正日 や フセイン が決して正当化できない
多くの仕業をおこなってきたことも確かである
しかし その彼らでさえ、まだ 論理的に話をしようとし
その論理によって 自らの行為を 説明しきれないかぎり
自分たちが 存在しえない ということを理解している。
だから 彼らとは まだ言語による 交渉の余地がある


アメリカは 現在 どう自らの行為を
正当化し説明しているか。
つまり
なぜイラクを攻撃しなければいけないのか(それもなぜ今、性急に)
その説明にもはや論理はありません。
イラクは危険ゆえに、なんとかしなければならない という言葉を
幼児のように繰り返しているだけです
その代わりとして 主要な説得道具として口に出されるのは
水面下の交渉の場面だけでなく 
水面上ですら あからさまに
イラク攻撃後の 復興計画 へ参加できる という権益です。
追随する 日本の小泉首相ですら それを認めている
イラク攻撃の正当な理由の説明をせずに
彼はこう答えた――――
『アメリカの信頼を失うと 今後日本がどうなるか
国民は理解していない』
いわば、これが日本がイラク攻撃を支持する理由だと
小泉首相は公然と述べたのです。


アメリカのこうした やりかたが 通ってしまうならば
今後の世界で 人の行なう 論理的な手続き、営み、仕事のすべては
機能をなくし、空洞化してしまうでしょう。
批評や
哲学ばかりか
もはや
小説も映画や漫画やアニメすらもなりたたない
たとえば映画のシナリオライターが
切磋琢磨して 誰もが納得するような
ストーリーを練り上げていく
そうした 作業がすべて意味を失うのです。
どんな無意味なストーリーでも通ってしまうのだから
というよりも
そもそも ストーリーが成立しない。
思考が成立しないのです。


本来は いかなる悪人であれ ヘンタイであれ
論理的に話すものです
 アメリカの今のやりかたが通った後では、
話せばわかる 
という救いは もうおとずれない


人間の言葉への信頼は消されてしまうのです 




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